(ネタバレあり)
今日の『相棒』は大道具・小道具がうまく使われていました。
冒頭、殺人者が着ているウサギの着ぐるみが不気味。
なぜウサギの着ぐるみなのかはやがてわかります。
15年前の別の殺人事件の舞台となる別荘の建物が本格的です。安っぽくない。
ヴァイオリン工房の双子の娘のひとりが殺された事件ですが、右京はその発端となった別荘での演奏会の観客だった。
その回想シーンで、演奏会で古びたソファに座って語らう双子の美少女。
古びた美しい別荘、美少女、ウサギ。
『不思議の国のアリス』へのオマージュだと思いました。
きのこ(でしたっけ? 本が見つからなくて確認できない)を食べたアリスが巨人になって傲慢な女王を見下ろすように、
15年後、少女だった双子の一人が成長して「傲慢な女王」に鉄槌を下す。
殺人を犯すのにはそれぞれ理由がある。
しかしどんな理由があれ人を殺してはならない。
それが右京の基本的な立場です。
殺人の正当性を主張する犯人に右京は顔をふるわせて怒り、その怒りを短いけれど激しいことばで伝える。
今日の「アザミ」は現在と15年前の二つの殺人事件の犯人がそれぞれ明らかになる。
右京は15前の事件の殺人犯に対しては激しく怒る。
しかし現在の殺人犯に対しては怒りを見せません。
右京はたまにそういう態度を取る。
殺人犯への共感。
逮捕の瞬間のつかの間の犯人との心の共振。
だけれどそれを右京はあからさまにあらわさない。
「アザミ」のラストシーンは、二人のそういう共振がシャイにあらわされています。
ひとつだけ腑に落ちない点があります。
15年前に殺された双子の片割れがもう一人に残したメッセージはタイトルのアザミの花です。「アザミのような人」に自分は殺されたのだと伝えている。
少女がどのようにしてアザミの花を手にすることが可能だったのか。
家族とおしゃべりしながら見てたので見落としたのかもしれませんが。
個人的にはスズメバチのシーンが恐怖でした。
昔、林の中に住んでいて、
娘がスズメバチの群れに襲われた。
娘の頭にたかるスズメバチを引きむしりながらわたしも何カ所も刺された。
ミツバチに刺されるとチクリと刺すように痛い。
スズメバチは違う。
巨人の拳骨で頭をガンガン殴られるような痛みです。
以後、山や林に行くときにはエピペン(アドレナリンの筋肉注射)を携行しています。
だから殺される少女の苦しみはひとごとじゃなかった。
おそろしや。
(付記)
公開した直後に気づいた。
「なぜウサギの着ぐるみなのかはやがてわかります。」と書いたのですが、
よく考えると、
なぜ「着ぐるみ」なのかはわかるけど、なぜ「ウサギ」かは殺人の理論としてはわからない。
ということは。
やはり『不思議の国のアリス』だからじゃないでしょうか。
「大変だ、遅れちゃう、遅れちゃう」という「あせったウサギ」が15年前の殺人犯だということです。
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