横浜中華街にたいして行ってないんです。
ハマッコの皆様、すみません。
「マラドーナと間違えられた男のお話」の続きみたいな想い出です。
マラドーナと間違えられた男は、
大学の少林寺拳法部の後輩でした。
浅草生まれの浅草育ち。
クルマが好きでした。学生なのにクルマを乗り回していた。
免許すら持っていなかったわたしにクルマの魅力を教えてくれたのも彼、K君です。
K君のクルマ、最初は古い丸っこいボルボだったかな。
そのあと、ランチア・デルタ・インテグラーレというイタリア車に替えた。
ラリーに出ていた伝説のクルマです。
K君は不意にクラブの仲間を引き連れて横浜中華街に出かけます。
彼が誘いに来ると数百メートルくらい前から音でわかります。
ブッバババババン、バララララララアーーーーッ、
というエンジン音が聞こえてくるのです。
大きくないランチア・デルタ・インテグラーレにギュウギュウ詰めになって中華街に向かいます。
彼が好きだったのは中華街というよりはずれにあった小さな店。
牡蠣油そばをよく食べに行きました。
おいしかったなーー。
それから中華街で有名な「悟空」というお茶屋。
中国茶を買って楽しんだ。
その「悟空」で店員さんと中国語で話していたK君を見ていたのか、
ひとりのおばさんがプーアル茶を指さしてK君に
「えーーーー、あのーーー、このお茶は・・・」
と質問しかけて言いよどんだ。
K君は「痩せるかどうかですか?」
と聞き返した。
おばさん、
「あらまあっ! どうしてわかるの?」
K君すかさず、
「見たらすぐわかりますよ」。
失礼きわまりないといえばそうなんですが、
その口調があまりにみごとで、おばさんも笑い出した。
みんなで遠出もした。
K君、ちょっと書けないようなスピードで飛ばした。
ランチア・デルタ・インテグラーレはものすごい加速で、
背中がシートに押しつけられ、頬の肉が後ろにひっぱられる。
「ふふふふふ、歩きのオスさん、加速っていいでしょ?」
はい、良かったです。
その魅力を教えてもらいました。
箱根ターンパイクの一車線の道で追い越しをかける。
のだけれど、左ハンドルだから対向車線がよく見えない。
「歩きのオスさん、抜ける? 抜ける?」
と聞いてくる。
あのーー、わたし、免許持ってないんですけど。
でも命がけで対向車線を見た。
「行けるっ!」と声をかけると、
跳ね馬のようにランチアが対向車線に飛び出していっきに追い越す。
スリル満点だったけれど、
クルマの運転は目と体の感覚なんだ、といういちばん大事なことを教わった気がします。
K君、飛ばすけれどけっして乱暴ではなかった。
飛ばすべきではないときにはみごとなぐらいにスピードを落とした。
クルマは思い立ったときに出かける自由な翼で、
その翼をあやつるためには、
体中を敏感にして踊るように躍動させていなければならない。
免許を持っていないわたしはランチア・デルタ・インテグラーレの助手席でそれを学びました。
楽しかったな。
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