忙しくて1月近く投稿していませんでした。
埋め草として昨年別のところで書いたものを再録します。
ツマミをつまむな!
今日の日記は、今までこれを知らなかった人には絶対に役に立ちます。
わたしは帽子が好きで帽子屋によく入ります。
が、いたたまれない思いをすることが多い。
先日もある帽子屋で帽子を選んでました。
イタリアのボルサリーノの帽子が棚に並んでいます。
わたしの隣で若いカップルが帽子を選んでいました。どうやら女の子が男の子にプレゼントするらしい。
感じの良いカップルでした。
しかーーーーーし!!!!!!!!!!!
ふたりとも帽子のツマミを持って試着している。写真の左上部のちょっと凹んだところがツマミです。
これは(帽子店の中では)絶対にしてはならないことです。かなりの人がそうしていますが。
見ている店員がハラハラしているのがわかりました。
高級なボルサリーノですから。
帽子の山(クラウン)はたいへん微妙な細工が施されている。ツマミを持つと型が崩れやすいのです。
帽子を着脱する時には両手でツバを持つ。ツマミに触るのは、挨拶をする際にちょっと持ち上げる時だけ。
荷物を持っていて両手が空いていない時はどうするか。
荷物を置けばいいのです。コートと帽子をクロークに預ける時もそう。二ついっぺんに渡そうとすると片手でツマミを持たなくてはなりません。順番にテーブルに置けばよい。
買った自分の帽子ならもちろん何をしようと自由。ツマミを持つと長持ちしませんが。
棚にはちゃんと「ツマミを持たないように」という注意書きの小さな札(ふだ)が置いてあるにもかかわらず、カップルはほとんど鷲づかみのような持ち方をしていました。
わたしは耐えきれなくなり、ニッコリ笑いながらできるだけ柔らかいことばで上のことを説明して注意しました。本当は「おれが買おうとしている帽子をつぶすんじゃねーよ」と凄みたいところでしたが、そこは大人ですから。
二人はムッとして店を出て行きました。
感じの良いカップルだったので注意などしたくなかった。でも帽子屋に入るなら知っておくべきことだと思い、教育的配慮から嫌われ者を演じました。美しいボルサリーノを作った職人を冒涜してはいけません。
「ほんとに困るんですけど、わたしたちからはなかなか言えないんですよ」
店員さんからはお礼を言われました。
あなたが帽子のツマミを持って被る時、帽子屋の店員さんたちと帽子を愛するお客さんたちは心を痛めているのです。