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2014年3月19日水曜日

「プロテクト」——『相棒』Season12 最終話

(ネタバレあり。注意)

シーズン12の最終話で2時間スペシャル。
おまけに
亡き小野寺官房長がらみのストーリーらしいと予告されていたから
『相棒』にときおりある「国家がらみのスペクタクル」ものかと思っていました。

予想外の地味なストーリー。
そして予想外に良かった。

父と息子の物語です。
裏の世界の黒幕と3人の息子の関係が次第次第に明らかになってくる。
父親を裏切った三男を、実は父親はいちばん愛していた。
父親にいちばん忠誠を尽くしている長男は、父親を裏切った弟を殺すことで父の愛を得ようと渇望している。長男に協力していた次男(最初はただの悪徳弁護士に見える)の複雑さもさりげなく浮き彫りにされていく。

その複雑な父と息子の関係が、
甲斐亮と父親の関係と並べられてストーリーに奥行きを与えている。

家族とは「業(ごう)」です。
人間を根底から規定している。だから冷徹非情なやくざである長男でさえ判断を誤ってしまう。

業だからのがれることはとてもむずかしいのだけれど、
もし人間に「自由」とか「解放」とかがあり得るのだとしたら、
それは家族の業からのがれる道しかないんじゃないか。
そんなことを考えてしまいました。

それをわかっているのが収監中の瀬戸内元法務大臣(津川雅彦)。
坊主だからこそ、人間の業の深さを知りつくし、同時に人間の業から離れた視点を持っている。今日は彼が主役だと言っていいかと思います。

業に縛られた父親を演じる中村嘉葎雄もいい。
甲斐亮の父親(石坂浩二)も今回は「渋い俳優」をあえて抑えて淡々と演じていた。津川雅彦と中村嘉葎雄を引き立たせる自分の立ち位置を正確に把握しているんだな、と感心しました。

脇役そろって過度な感情表現を抑えた名演技。



相変わらずディーテイルがいい。

明け方に呼び出された甲斐亮に、恋人が差し入れを渡すところとか。
その少しあとに不正規な仕事に呼び出された鑑識の米沢巡査部長の髪がボサバサで、
オフィスの電気が暗いところとか。

「地味な傑作」なんじゃないだろうか。




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