今朝の新聞を読むまでうかつにも知らなかった!
パコ・デ・ルシアが 2/26 に亡くなっていた。享年 66。
言うまでもなく、フラメンコギターの幅を広げた名人中の名人。
その超絶的な腕前は、たとえば、
『巨匠に捧ぐ〜ニーニョ・リカルドの想い出』を聴くとわかります。
パコの師でもあるニーニョ・リカルドを追悼して、フラメンコ・ギターのそうそうたるスターたちが参加したアルバムですが、パコは、音の質、フレージング、トレモロの正確さなどあらゆる点で他を圧倒しています。
わたしがいちばん好きな曲は、名作『アルモライマ』に収められている「広い河」。
ジャンゴ・ラインハルトなんかも弾いているルンバの名曲ですが、終わる少し前の数秒の早弾きのフレーズは、パコ以外に弾ける人間がいるとは思えないし、美しい。
1990年の春だったと思います。
イギリスのケンブリッジでパコ・デ・ルシアのコンサートに行きました。
さほど大きくない会場に集まった聴衆のかなりの部分は、スペインもしくはスペイン語圏の人たちでした。
二人の若手を両脇に従えて繰り広げられる情熱と悲しみと喜びのギター。
そのうちの一曲はスペイン人なら誰でも知っている伝統的な曲らしかった。
曲名をパコが告げたとき、スペイン人たちが嬉しそうな声を上げたからわかりました。
フラメンコ・ギターは、テーマのメロディーを即興で変奏していきます。
その曲のある変奏部分で、パコはリズムを落としてむせび泣くような独奏のフレーズを奏でました。その瞬間、まわりのスペイン人たち(その瞬間までは非常にお行儀のよい観客でした)が、一斉に「ああーー」と感に堪えない吐息をもらしました。
「この曲をこんな風にアレンジして歌わせるのか!」という驚きと喜びのため息。
それほどまで、そのフレーズはスペイン人の心に染みわたる「こぶし」だったのだと思います。
パコ・デ・ルシアは、チック・コリアなど他のジャンルのさまざまな名手たちと共演し、フラメンコ・ギターの幅の広さを世に知らしめた革新者でもありますが、
スペイン人観客のため息を聞いたとき、この人はやはり骨の髄までスペインの音楽家なんだと(当たり前なんですが)思い知らされました。
その夜のコンサートは、終了予定時間をはるかにオーバーして終わりました。
至福のひととき。
あの夜の音は決して忘れません。
すばらしい音楽をありがとう。
遅ればせながら
パコ・デ・ルシア氏の安らかな眠りを心からお祈りいたします。
パコ・デ・ルシア氏の安らかな眠りを心からお祈りいたします。
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