「スキャパ」という地名を知ったのは高校生の時。
アリステア・マクリーンというイギリスのサスペンス作家がいます。
作品はほとんど早川書房から邦訳が出ています。
いちばん有名なのは、
映画も名作です。
主演の2人ともわたしのお気に入り。
なかでもギリシア系アメリカ人、アンソニー・クインはわたしの中の男優 No.1。
フェデリコ・フェリーニ監督の『道』がアンソニー・クインの代表作なんでしょうが、
『道』は『火垂るの墓』と共通するつらさがある。
名作で泣けてくるのだけれど二度と見られない。つらいです。
アンソニー・クインならこの『ナヴァロンの要塞』と『世界を我が手の中に』がイチ押しです。どちらもグレゴリー・ペックとの共演なのが面白い。
グレゴリー・ペックはアングロサクソンの典型的な紳士というイメージがあります。
でもそのイメージを前面に押し出した作品は総じてよくない、というのがわたしの判断。
『ローマの休日』では大根役者です。
ところが。
なぜか、アングロサクソンの対極にあるがさつなギリシア男、アンソニー・クインと組むとグレゴリー・ペックは生き生きする気がします。
『世界をわが手の中に』は海賊映画の名作中の名作。これを見ずに海賊を語るな!
と言いたくなるような快作です。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』も楽しいけれど、こいつには及ばない。
わたしは中学生の時にこの映画を見て、海賊になろうと決意しました。
海賊になるために高校ではヨット部に入りました。
視力が悪くて東京商船大学の受験資格がないことを知ったときは、大地が崩れるようなショックでした。
それでも夢を捨てきれずに、
海賊に必要な英語力を身につけるべく猛勉強してバイリンガルの大学に入り、
格闘の技量を身につけるべく少林寺拳法部に入りました。
ほろ苦い思い出です。
あ、アンソニー・クインの話でした!
『ナヴァロンの要塞』の圧巻は、
アンソニー・クインが仮病を使うところ。
ものすごい演技です。古代ギリシア以来の演劇の伝統ここにあり、という史上最高の仮病。
(おお! "High on the cliff are guns of Navarone, guns of Navarone..." という主題歌が
酔っぱらった頭に流れてきます)
(おお! "High on the cliff are guns of Navarone, guns of Navarone..." という主題歌が
酔っぱらった頭に流れてきます)
あ、アンソニー・クインの話じゃなくてアリステア・マクリーンの話だった!
特に中期までの作品はすごいです。
いちばん好きなのは『最後の国境線』。
これは中3のときに読んだ。
わたしの国際政治の感覚は、この本によって養われた気がします。
「自由への夢」と「政治の過酷な現実」の関係を人間はどう考えたらいいのか。
ハンガリーの老戦士ジャンシは、わたしが政治を考える時にいつも脳裏に浮かぶ人物です。
「ドアを開けて『やあ、諸君』などと言う人間は長生きできない」
彼はドアを開けると同時に銃を乱射する。
すげえリアリズム。当たり前で、アリステア・マクリーン自身が戦場をくぐり抜けた人なんです。
これはとてつもなくすごい作品です。
第二次世界大戦のイギリス海軍巡洋艦ユリシーズ号の物語。
だいたいアクション・サスペンス小説というものは、
読者を引きつけるために魅力的な女性を登場させる。
アリステア・マクリーンも例外ではない。
『荒鷲の要塞』(これも名作。このケーブルカーのシーンに手に汗握らない人間をわたしは人間として信用しない)にもキュートな女性が登場する。
ところが、
『女王陛下のユリシーズ号』にはそんな女性は登場しない。
どころか、
そもそも女性が一人も登場しない。
厳しい北海で、 男たちの苦闘がただただリアルに描かれる。
海戦で撃沈され、海に投げ出された仲間を、
ユリシーズ号があえてひき殺す場面は、非情かつ涙がこぼれます。
なぜひき殺すのか?
重油が大量に海に流れ出しているのです。
海に投げ出された友軍は、海面に頭を出すことができずに、油と海水の間でもがき苦しんでいる。
ユリシーズ号の艦長は、彼らの苦しみを絶つために、
断腸の思いで彼らのいるところに艦を突っ込ませてひき殺すのです。
わたしはアリステア・マクリーンから「軍隊と国民のあるべき関係」も学びました。
日本軍が真の意味で「軍隊」であったことは一度もない、ということもアリステア・マクリーンを読んでおぼろげに見えてきました。
ひでえ軍隊です、日本軍は。
戦場の修羅場をくぐり抜けた父親の話のはしばしからもそれは想像できましたが、
アリステア・マクリーンから、そのことを客観的に認識することができました。
ふり返ると、古代ギリシアを学ぼうと思ったのは、アリステア・マクリーンから知った「西洋的軍隊」
の原型を知りたい、と思ったこともあったと思う。
そのユリシーズ号の本拠地が、
スコットランド北方のオークニー諸島の「スキャパ・フロー」。
ようやく「スキャパ」にたどり着いたぜ!
ええーーーっと。
まじめな話題から落ちて恐縮なのですが。
最近「スカーフ」とか「ストール」というものの魅力に気づきました。
おそすぎた。
冬にはマフラーをしてました。
でも、今シーズンはじめてイタリアのスカーフをしてみて世界が変わりました。
暖かいしおしゃれ。
街で観察してると、女性はいろいろな使い方をしている。賢い。
マフラーが嫌いになったわけじゃないけれど、
こういう世界があったんだ! と思いました。
(女性にとっては「何を今さら」だと思いますが)
それで、季節はずれているけど、
薄手のスカーフかストールを探しに出かけました。
すべて女性ものの店。
当たり前です。男性がそういう想像力あるわけないから、商品もそんなにあるわけがない。(ポールスミスにはありました)
もちろん、女性が羽織るものと男性のそれとは原理が違うはず。
わたしの場合、ジャケットやスーツにネクタイか蝶ネクタイ、というスタイルが多い。
それに合うものを探さなければなりません。
10数軒まわりました。
どんどん試着しているうちに「スカーフよりストールだな」という感覚がわかってきた。
ストールだとネクタイが隠れる。
室内に入ったときに「ストールを外すと、その下から違うイメージのネクタイや蝶ネクタイがあらわれる」という路線がいいんじゃないかと思えてきました。
最終的に候補に残ったのが「マックス・マラ」と
「スキャパ」
だったんですね。(やっとスキャパかよ)
わたしは服を選ぶ場合、ブランド名にいっさい関心がありません。物だけに関心があります。
特に「スキャパ」は、物を選んで店の名前を聞いたらスキャパだった、という感じでした。
「スキャパ」はスコットランドのブランド。
もちろんオークニー諸島のスキャパから来ています。
女王陛下のユリシーズ号!
昔はメンズも扱っていて、わたしはシャツが大好きだった。
1枚だけ残っているスキャパのシャツは20年以上たってもすり切れずにしっかりしています。値段もリーズナブルでした。
迷いに迷いました。
「マックス・マラ」もすばらしい色柄だったし、店員さんの感じもよかった。
「スキャパ」に決めました。
大判のストール。
コートの上から大きく羽織ったりしようかと思っています。
ああ、スカーフとストールを知らなくて、なんて損をしてたんだろう。
春には薄手の大判スカーフを探し回ろうと思ってます(女性物の店で)。
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