「なーんだ」と思った方もいるでしょうが、そこは伝統料理、上に乗った ベシャメルソースが独特 です。フワフワ、もっちりして軽い。
昔、クレタ島の港町イラクリオンの小さなアゴラ(広場)のタベルナで食べたムサカの味が忘れられない。「今まで食べたムサカは何だったんだ」というくらいフワフワもっちりのベシャメルソース、香り高いミートソース。その味に近づけるようけっこう工夫しました。
わたしはこだわりの料理人ではないし、それなりに忙しいので手を抜けるところはどんどん手を抜きます。でも ムサカは本質的にスローフード です。どうしても手を抜けない行程がいくつかある。ネットを検索すれば「ムサカの簡単レシピ」の類はかなりヒットしますが、それはあくまで「ムサカ風」挽肉グラタンにすぎません。
以下はわたしなりの「ムサカ風」ではない「ムサカ」です。これは違うぞ、というギリシア人もいるかもしれません(特にミートソースの作り方)が、まあしょうがありません。スローフードだとは言っても、手の遅いわたしでもオーブンに入れるまで1時間ちょっとというところでしょうか。
ムサカの作り方(4人分)
《材料》
牛挽肉 300g
ナス 5~6本(大きさによります。少ないと困るので加減してください)
玉ネギ 1 個
セロリ 少々
パセリ 少々
トマトの缶詰 1 缶
薄力粉 80cc
牛乳 480cc
卵 1 個
チーズ 1 カップ弱(約半分がクリームチーズ。後述)
赤ワインor白ワイン 適量
オリーブオイル、オレガノ、ミント
塩胡椒
【1 材料を切る】
- ナスを薄切りにして軽く塩をふっておく。しばらく置いたら水洗いしてペーパータオルなどで水気を取る。(めんどくさい人は切るだけ)
- タマネギ、セロリ、パセリ、ミントの葉(多すぎたらくどい)をみじん切りにする。これらは一緒くたにしていいが、タマネギのごく一部をみじん切りせずに長いまま残して別にしておく。
- チーズを刻む
【2 ミートソースを作る】
- 鍋に牛挽肉を油をしかずに放り込む。出てくる水分を飛ばすようにしばらく炒め、肉をパラパラにする(これは省略できない)。焦がさないように。
- 肉がパラパラになったら少量のオリーブオイルを入れてタマネギ・セロリ・パセリ・ミントの葉を入れて炒める。適量のワインを加える(わたしは質のいい純米酒を使うことが多い)。オレガノをふる。オレガノの代わりにディルを刻んで入れることもあります。料理本にはナツメグとかシナモンを入れろと書いてあるのもありますがわたしは最近入れてません。好みじゃないからです。
- タマネギが半透明になったらトマトの缶詰を入れて塩胡椒で味つけ(ベシャメルソースに塩を入れないので気持ち強めに)。水気を飛ばし、肉にしっかり味をまとわりつかせる(大事です)。
【3 ベシャメルソースをつくる】
わたしはミートソースのトマトを放り込むあたりからベシャメルソースを作り始めます。
- 鍋にオリーブオイルを熱し、薄力粉に十分熱を通す。このとき、分けておいた少量のタマネギも入れます(ダマになりにくい)。ベシャメルソースにバターは使いません。これが軽さの秘訣。
- ダマにならないよう少しずつ牛乳を加えてなめらかなソースにしていく(ふつうのベシャメルソースと同じ要領です)。
- 刻んだチーズを入れてかき混ぜながら溶かし込む。わたしはクリームチーズとハルーミというギリシアのチーズを同量、それに削ったパルミジャーノを少々加えています。ハルーミが手に入らなければ何か固いチーズを使う。要するに、軽やかなクリームチーズにややコクのある固めのチーズを好みで合わせるということです。
- チーズがあらかた溶けたなと思ったら、溶いた生卵を入れて手早くかき混ぜ、火が通りすぎないうちに火を止める(当たり前か)。卵を1個にするか2個にするか迷うところ。わたしは最近1個にしています。
【4 ナスを焼く】
【5 重ねる】
- 耐熱容器にペーパータオルなどでオリーブオイルを塗り、底に炒めたナスを敷きつめる。
- ナスの上にミートソースの半量、その上にナス、その上にミートソース、その上にナスを敷きつめる。いちばん上にベシャメルソースをかける(好みでパルミジャーノをふりかけても良い)。
【6 オーブンで焼く】
180° のオーブンで30~40分、表面にうっすら焦げ目がつく程度まで焼いたら完成。切り分けて食べる。オーブンで焼いているあいだにサラダやパンを準備する。
(2014/1/18 付記。好みが変わってムサカ「コクふわバージョン」を投稿しました。基本は変わりませんがより複雑な味わいです)
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