P.D.ジェイムズが亡くなった。享年94。
ダルグリッシュ警視が活躍するすぐれた推理小説の作家でした。
拳銃ドンパチのアクションはほとんどない。
でも複雑な人間の心理をいかにもイギリス人らしいちょっと皮肉な視点で描いてみせる。
読み終わったあとで人間の見方がちょっと深まった気がする、
そんな余韻を残す作品群でした。
イギリスでは「ミステリーの女王」と呼ばれたくらい人気のある作家ですが
日本ではそれほど人気がない。
さっきAmazonを覗いたら手に入る作品はとても少ない。
この責任の大半は日本語訳にあると思います。
上に書いたように、
複雑な人間心理を皮肉な視点から描くP.D.ジェイムズの英語はやさしくない。
でも読み解けるとうなってしまうほど味がある。
P.D.ジェイムズを読むことには昔懐かしい「英文解釈」の楽しさとスリルがあるのです。
わたしは学生の英語力を試すときにはP.D.ジェイムズを読ませることにしています。
邦訳すべてに目を通したわけではありませんが、
中期頃までの代表作のほとんどの訳は、その味がある文を伝えていない。
というか誤訳が多すぎる。
わたしがP.D.ジェイムズを熱心に読んでいたのはずいぶん前ですが、
日本語訳のあまりのひどさに腹が立って「P.D.ジェイムズ誤訳集」を書きためたくらいです。
二年ほど前の投稿「レジナルド・ヒル追悼」にも
P.D.ジェイムズの邦訳に触れ、『罪なき血』の改訳が出ているけどまだ読んでない、
と書きました。
暇がなくて改訳読んでません。
が、Amazonをざっと見た限りの話ですが『罪なき血』以降、改訳は進んでない様子です。
残念でなりません。
もっと読まれていい作家なのに。
退職したらたっぷり時間をかけて
もう一度P.D.ジェイムズを読みたいと思っています。
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