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2020年12月31日木曜日

年越しそば——日本酒の話 その3

毎年、大晦日には姉の家に親族が集まり、十割そばを打って茹で上がるそばからワイワイ言いながら食べるのが習わしでしたが。
今年はコロナ渦で中止。


で、家で鴨そばを作って家族3人で食べました。
三つ葉と柚子をのっけた。
うまくできました。
当然、日本酒を飲む。

新年用の酒は準備してあるし、
豊盃 月秋
年内に飲んでしまわないといけない酒が2本。
青森県の「豊盃(ほうはい) 月秋」と岩手県の「月の輪 秋あがり」
どちらも「秋あがり」です。
夏を越して落ち着いた頃に一回火入れした酒が「秋あがり」。
秋の季節ものなのですでに時期遅れなのですが、さすがに年を越したらまずい。
(ま、誰に怒られるわけじゃないので悪いことではないが、気分的にまずい)

どちらもうまい。そしてそばに合う。
「豊盃」はいろんな銘柄を出していてどれもおいしい。 「日本酒の話」「豊盃にハズレなし」と書いたことがあります。
この「月秋」も、マクワウリにハッカのような控えめな吟醸香、バランスの取れた濃醇さ、「ハズレなし」です。

しかし。
「月の輪」はもっとすごい。もともと好きな酒蔵なんですが、
この「秋あがり」にはうなってしまいました。

「豊盃、破れたり!!」
ただ、「月の輪」は手に入りにくいからなーー。
そこが残念。

残り少なかったのでそば食ってるあいだに2本とも空いて、
お新香をつまみに「郷乃誉 霞山 (かざん)」に移りました。
この酒も「日本酒の話」で触れました。
定番酒です。

が、味が変わったと思う。
「生酛 (きもと)」の含み香が強くなった。

生酛の香りはまったく苦手じゃなくて、
この「霞山」は生酛系としてかなりうまい部類に入ると思う。
でも以前の、不思議にヌルッとする丸みのある味の方が好みかな。

皆様、よいお年をお迎えください。

2020年12月25日金曜日

メカジキのエビペースト炒め


エスニックな炒め物です。


写真のエビペーストはタイ製の瓶詰め。
蓋を開けるとエビのかなり強烈な香りが立ちのぼります。
中華にも固形の海老醤 (ハージャン) というものがある。
こういう濃厚エキスの調味料は最初にしっかり熱を通すのがポイントです。
くどさがなくなって旨みが引き立つ。
(ハージャンだけで炒めた豚肉べらぼうにおいしい)

野菜はあるものを使えばいいのですが、
セロリと赤タマネギと香菜 (パクチー) は必須かな。
苦手な人は「エスニック」の度合いを諦めてください (十分においしいとは思います)。
ですので材料表の野菜は便宜上のものだと考えてください。
なすのかわりに多めのインゲンとかでもおいしいと思います。


メカジキのエビペースト炒めの作り方

《材料》(3人分)
メカジキの切り身    3枚
セロリ           1本
きのこ                             1パック (しめじ、ひらたけ、キクラゲなど。椎茸は合わないかな)
たまねぎ        1/4個
ピーマン        2個
なす            1~2本

赤タマネギ           1/4個
パクチー            2~3本
レモン             適宜
ショウガ         1片

サラダ油        大さじ3 (できれば葱油——作り方はジャガイモの中国風サラダ
                                    をクリックして見てください)
ナンプラー                      大さじ1 (最低量です。好みで増やしてください)
輪切り唐辛子                   好みで適量
レモングラス                   適量 (なくても可)
塩           適量


【下準備

パクチーはざく切り。赤タマネギは薄切りにして水にちょっとさらして水気を切る。ショウガはみじん切り。セロリはそぎ切り (大きすぎたら半分に切る)。キノコはバラにしておく (キクラゲなら千切りに)。メカジキは一口大に切って塩をしっかり振っておく。他の野菜は一口大に切る。


ナスは切ったら海水くらいの濃度の塩水 (水1ℓに塩小さじ1だけど目分量です) に入れてガシャガシャひと混ぜしておく。ナスを塩水に放つのは「アクをとるため」とかを読んだことがあって、以前は「アクなんか気にならないわい」といっさいやらなかったのですが、奥園壽子さんが「油を吸いすぎないようにするため」と書いているのを読んで実行しています。たしかに全然違う。油を吸ってトロトロのもおいしいけど、麻婆ナスとかはさすがにくどい。塩水につけると (ただし10分以内) 油っこくないです。

レモングラスはなくてもいいのですが、わたしは庭に植えてるやつを洗って山ほど冷凍しています。固いので凧糸で縛って使い、あとで取り出します (食べない)。
レモングラス



【作る】
エビペーストを炒める
1) 鍋に油を入れて火をつけ、エビペーストを炒める。辛みが欲しい人は輪切り唐辛子もいっしょに。

2) レモングラス、ショウガ、メカジキと(赤タマネギ、パクチー、レモン以外の)野菜を入れて炒める。ナンプラーと塩で味を整えます。

3) レモングラスを取り出して皿に移したら、赤タマネギ、パクチーをのせてレモンを添えます。


完成




 

2020年12月20日日曜日

トップセブン

吉祥寺の「TopSeven (トップセブン)」が閉店する。
ちょっと変わったデザインの靴の店で何足か持っていて愛用しています。

閉店セールで全品¥2,500!!

ありがたいのだけれど寂しい。
緑の革靴を買いました。
同じ形のバーガンディはずっと愛用している靴です。
これを¥2,500で売らなければならないとは!!


楽しい服や靴の店がどんどんなくなっていく。
ユニクロも持っていますが、それだけじゃあ夢も希望もない。
スーツにネクタイにトップセブンの靴。
そういうミラノ発祥らしい楽しい遊びができなくなってしまう。
(メーカー自体がなくなってしまうわけではないようです。でも、嬉しそうに勧めてくれる店員さんたちとの会話の場がなくなってしまう)

収入が少なくなればまず切り詰めるのは服や靴。
コロナ渦でそうなるのはしょうがない。
だけれども。
楽しい服を着た大人が街を歩いている風景はとても大事だと思う。
そういう風景がなくなったとき、大げさに言えば人生の喜びが目に入らなくなる。
もちろん、みんながみんなおしゃれをしなくたっていい。
お金がなくて買えなければしょうがないんだし (わたしも40歳くらいまでそうでした)。
でもある程度の収入がある大人はおしゃれをして街の景色を作る社会的責任があると思っています。そういう景色は人に希望を与えるからです。

ミラノの街を歩いてそう実感しました。
何を仕事にしているのかわからない怪しいじじいが安っちい紫色の革ジャンとか着て、派手なスカーフ巻いて、ちょっとくたびれた感じの美人の女性と歩いている。
でもかっこいい。
人生、いろいろ楽しいことがありそうだ。
見ているわたしはそんな風に感じました。

服や靴は人間に希望を与えるものだ。
別に高いものでなくたっていい(ミラノのじじいのように)。
わたしはそう信じています。
そして服に限らず、文化の意味というのはそういうもんなんじゃないでしょうか。

安っちい紫色の革ジャンが買えなくなったら街から幸せがひとつ消える。

店がなくなるたびに文化の光が消えていく気がします。

2020年12月18日金曜日

ブルックス・ブラザーズ

いささか旧聞に属しますが7月にアメリカのブルックス・ブラザーズが破産しました。
ボタンダウンのシャツをはじめて出し、歴代大統領の多くが愛用したアメリカの伝統的ブランドです。わが国のブルックス・ブラザーズは存続するようですがやはり寂しい。

ブルックス・ブラザーズはシルエットが好みではないので、スーツやジャケットは持っていない。でも、ずっと好感を持っている店です。

きっかけは。
十数年前でしょうか。
謝恩会の会場に向かう途中で締めているネクタイがつまらなく思えてきて、蝶ネクタイにかえることにしました。その頃のわたしは、結んであってフックで止める蝶ネクタイしかしたことがなかった。
会場ホテルの近くのデパートに飛び込んで、まずバーバリーが目についたので事情を話したら、店員は「うちにはそのような蝶ネクタイはおいておりません」と馬鹿にしたような口調で言った。
もちろんフックで止める蝶ネクタイが本式じゃないことは知っている。
だけどその態度はないだろう、と腹が立った。

隣にブルックス・ブラザーズがありました。
そこにも結ぶ蝶ネクタイしか置いてなかった。だけれども。
ブルックス・ブラザーズの店員さんは、
「結ぶの、そんなに難しくないですよ。それにわたしが結んでさし上げます」
と言って、結び方を説明しながら手際よく結んでくれて、
しかもパーティーの場で万が一緩んでしまった場合にどうすればいいのかも教えてくれた。
なんという違いだろう。
わたしはイギリスじゃないアメリカの良さを実感しました。いい店。
ものを知らない客だろうと洋服というすばらしい世界に引き入れるのだという心意気。
以来、蝶ネクタイを結べるようになりました。

ボタンダウンのシャツをあまり着ないこともあって、ブルックス・ブラザーズあまり持ってません。でもボタンダウンならブルックス・ブラザーズを買います。襟の形が立体的で美しい。
そうそう、上に書いた店員さんに「ブルックス・ブラザーズはボタンダウンのシャツで有名なのに蝶ネクタイ置いてるんですね」と言ったら、その店員さんは、
「いや、ボタンダウンに蝶ネクタイはありなんですよ。かえって面白い組み合わせだと思います」と教えてくれた。


襟がちゃんと見えないのですが、写真のボタンダウンのシャツとタイはブルックス・ブラザーズ。
上に書いたようにシルエットが好みではないのでポールスミスのスーツと合わせています。
小紋のネクタイも数本しか持ってないのですが、店頭でこのブルックス・ブラザーズの緑の色合いにガツンとやられて、それに合わせて紫のシャツを選びました。

つかず離れず好きな店、という感じでしょうか。



2020年12月16日水曜日

「超・新生」——『相棒』Season19

テンポがいい。
そして遊びがあった。

贋作を売っていた野原の列車飛び込み事件の真相は何か?
贋作は暴力団「扶桑武蔵桜」のシノギだったのだが、
組長桑田圓丈と親交のある内村刑事部長から捜査への「待った」がかかる。

そういうストーリーなのですが。

これまでこのブログで何度か懸念を表明してきた登場人物・出雲麗音 (いずもれおん)
今回は出番が多かった。
そして純情さと老獪さのブレンドがよかった。
扶桑武蔵桜組の贋作工房への半グレ集団の襲撃に居合わせてしまった
特命係・伊丹刑事ら・内村刑事部長。
出雲麗音は、応援の要請を内村刑事部長から止められてとっさに扶桑武蔵桜に連絡する。
そのリアルポリティクスがいい。
サイバー犯罪課の青木とともに特命係の「変な同志」の仲間入りを果たしたなと思いました。

その襲撃現場で頭を強打された内村刑事部長。
回復後の変貌ぶりに笑ってしまう。
これまで描かれてきた組長・桑田圓丈との関係からすると意表を突く展開。
このあと内村をどう扱うかは難しいとは思うけどなかなかの冒険だと思います。
「超・新生」というタイトル、見終わると意味がわかって笑っちゃいました。

2020年12月15日火曜日

服を買うということ

洋服屋さん、がんばれ!!

心からそう思ってます。
コロナウィルス禍で大変だと思う。

でも、店に行って店員さんと話をして服を買う
そのことの豊かさは絶対になくしてはならない文化だと思う。

3.11大震災の直後の服屋の消沈はただごとではありませんでした。
意味不明の「自粛」ムードのなか、客の姿がない。
わたしは今こそ服を買うべきだと思って、何十万も借金して服を買いました。
自分が好きな服がなくなってほしくない。
その一心でした。

服とか音楽とか絵とか演劇とか。
そういう「役に立たない」と思われているものこそが実は人間の「元気」を支えてる


わたしが好きな店のひとつ「キャサリン・ハムネット」のベテランの店員さんは
「もうわたしたちの仕事の先はないですよ。今の若い人たち、ネットで買って気に入らないとすぐ返品してってやりますからね」と嘆いていました。
その店員さん、売るためだけではない心意気を持っていました。
「今シーズンは歩きのオスさんに勧められるものないんですよ」
なんて平気で言ってくれた。
でもわたしに売りたいと思うものがあると奥から出してきて熱っぽく勧めてくれた。

あるいは。
今ではもう少なくなってしまいましたが、
昔はデパートの洋服店にはかならずベテランのおばさんの店員さんがいて、的確なアドバイスをしてくれました。そういうおばさんのアドバイスはあとから振り返るとかならず正しかった。

そういう人たちが服という文化をきっちりとささえてたんですね。

わたしはプロフィール写真を見ておわかりのように、たいしたファッションセンスは持っていない。
でも、上に書いた店員さんたちのおかげで服の文化の奥深さを教えられました。
モノクロの服で「決める」こと、それは絶対にしない。
だって誰だって決まるから。
色を使うことは難しいのだけれど、そこにこそ服の醍醐味がある。
デートにモノクロの服で行くなよ。

大学で教える身として授業時間は「夢の時間」でなければならないと思っています。
もちろん教える内容自体が夢でなければなりませんが、
学生を夢の時間に誘い込むための方策として服は大事だと思っています。
(もちろん、服装に頓着しないタイプの先生の魅力があることはわかっています。みんながみんな服にこだわる必要はない)
だから同じ授業で同じ服の組み合わせは絶対にしない。
毎朝服の写真を撮ってそれを避けるようにしてきました。

悲しいことに定年退職の身だから、3.11直後みたいに借金して服を買うことはできません。
しかし、服の文化を支えてる(一部の)店員さんたちのすごさには頭が下がります。

例えば。
「トゥモローランド」の概してシャイな店員さんたち。
彼らはものすごい知識と見識を持っていました。
自分の美意識にかなった商品があると全力で(でもシャイに)わたしを説得してくる。
その一例は「重い服の意味」で書きました。
元気だろうか。
わたしは気軽に店に行くわけに行かないけど、
彼らがしっかり儲けてくれることを心から願ってます。

若い人たち。
恥ずかしかったり、めんどくさかったり感じるでしょうけど、
売ることだけ考えているんじゃない優れた店員さんたち(ほんとうにいるんですよ)と話をすると、ネットで見る無難なコーディネートなんかとは違う広い世界が広がってきますよ。

 

2020年12月14日月曜日

「勝負の三週間」何をしてた?

 「GoToトラベル」の一時停止が決まった。
遅すぎるよ。

コロナウィルスが第3波に突入して以後、
政府と東京都が何をした?
何もしなかった。

国民に自粛を呼びかけた。
でもそれは断じて「政策」ではない。
具体的な政策を提示し、それを市民に説得し、実行に移すこと。
それが行政の仕事じゃないんですか?

管首相と小池知事は呉越同舟。
なんとしても「GoToTravel」を維持して、東京オリンピックの予行演習にしたかった。
都民の65歳以上の旅行自粛の要請が感染防御上意味がほとんどないことは
医療従事者が口をすっぱくして言っていた。
だって第3波の感染者の多くは家庭内感染なのだから、
じじいばばあがいくら外出を自粛したって(そしてとっくに多くの高齢者は自粛していた)
効果薄だ。

大阪市長と札幌市長はちゃんと政策をやってた。
おそらく政府からの抵抗があっただろうけど、市民を守るために力を尽くした。
管首相と小池知事がこの三週間にやったことは自粛の要請だけ。
なにひとつ政策をやってこなかった。
「危機感を持って注視している」?
「スピード感を持って対処していく」?
「注視する」のは行動しないと言うことでしょ。
「スピード感」ってどのくらいのスピードなんだ? 時速4kmか?

「GoToトラベル」の一時停止、「勝負の三週間」の最初にやるべきだったのは明白。
そもそも GoToTravel なんてまともな英語じゃないしね。
世界に対してこの上なく恥ずかしいキャッチフレーズ。
だから「トラベル」だけカタカナにしたのか?
「旅行しようぜ」でいいじゃないか。
たいして英語もできないくせに英語を使うんじゃないよ。

こんな為政者を市民の多くが支持していることが解せない。
暗澹たる思いです。


2020年12月11日金曜日

小海老のコンソメジュレ

「蒸し鶏」で残った煮こごり利用第2弾。

海老のコンソメジュレのレシピはネットにいろいろ出てますが、
キュウリとディルを使うのがわたしの工夫かな。
2人分としましたが、前菜なので適当。倍量作ってもいいです。

最近、このブログで料理の投稿が多いのはコロナ・ウィルスの影響です。
4月以降、娘もリモートワークになったので家族3人、1日3食家で食べる。
奥さんに任せておくと鍋かおでんかいなげやの惣菜になってしまうので、
半年以上、ほぼ毎日わたしが昼食夕食を作ってます。
朝冷蔵庫をチェックして食材が無駄にならないようその日のメニューを考える。
おかげでレパートリーは以前の3倍増しくらい。
忘れないように投稿するので、料理の投稿が増えてしまいました。


小海老のコンソメジュレの作り方

《材料》(2人分)

小海老                5,6尾
キュウリ         1/3本
ディル                2枝ほど
蒸し鶏の煮こごり 90cc (なければ水だけど煮こごりの方が断然おいしい)
白ワイン             大さじ2(ドライシェリーにするともっとおいしい)
コンソメキューブ 1/3個くらい
粉ゼラチン          3g (煮こごりじゃなく水を使う場合は5g)
          適宜
片栗粉                適宜 (大さじ1~2? 計ったことありません)

【作る

1) 小海老は縦半分に切り、爪楊枝で背わたをとったら片栗粉をまぶして揉み、
水で洗い流したらキッチンペーパーで水気をとる
臭みを取るためにこの下処理は小海老料理では必須です。

2) キュウリは皮をむいて細切りにする。ディルは葉の部分だけを細かにたたく。
(ディルは日持ちしないので、わたしは洗って葉の部分だけを冷凍しておきます)

3) 小鍋に煮こごり (または水) を入れて火をつけ、コンソメと白ワイン (またはドライシェリー) を加える。

シェリーは独特の香りがするスペイン南部の白ワインです。いろんなタイプがあって、アモンティリャード、マンサニージャ、フィーノとかが「ドライシェリー。特にエビ料理に合います。

4) 80°くらいになったら (計ったことがない。指先を突っ込んで「アッチッチッ!!」くらい) 粉ゼラチンを加えてよーーく混ぜる。小さな泡立て器でシャカシャカやると楽です。

5) ジップロックなどの深さのある保存容器に移し、ボールに入れた氷水で冷やして粗熱を取る。

6) 粗熱がとれたら海老とキュウリとディルを加えてかき混ぜ、
指でペロッとなめて塩で味をととのえる。冷蔵庫で冷やす。


【完成】

プリンみたいにお皿にポコンと落としたら完成です。




ツナのムース

前回の投稿の「蒸し鶏」を作ると鍋に蒸し汁が残ります。
これを冷蔵庫に一晩入れておくとプルンプルンの煮こごりに。
うまみのあるこの煮こごりを利用するのが「ツナのムース」。
けっこうおしゃれな前菜だと思います。
ブラウンのハンドブレンダー
(蒸し鶏を作らなかった場合は水で代用。その分粉ゼラチンの量を増やします。でも蒸し鶏の残り汁を使った方が断然おいしいです)



ハンドミキサーかハンドブレンダーが
必要です。
本格的なハンドミキサーはかさばるのでわたしはBraunのハンドブレンダーを使ってます。
高くないしこれで十分。コンパクトで、刃の部分は食洗機で洗えます。




ツナのムースの作り方


《材料》(2,3人分)
ツナの水煮缶      2缶 (140gでした。100g以上あればいいと思います)
アンチョビ         2枚
蒸し鶏の煮こごり        60ccくらい
固形ブイヨン              1/4~1/3かけくらい
生クリーム                 120cc
粉ゼラチン                 3g (煮こごりがなくて水を使う場合5gくらいかな)
塩・黒胡椒                  適宜
ドライシェリー          小さじ1/2 (なくても可)

ピクルス                    適宜 (ただし甘い「スイートピクルス」じゃないもの)
オリーブ                  黒でもグリーンでも適宜
パセリ                   適宜
ラスク                       甘くないものを適宜
キュウリなどの飾り野菜を適宜

【作る

1) 冷蔵庫から蒸し鶏の煮こごりを出して、表面の白い脂をスプーンでざっと取り除く。

2) その60ccを小鍋に移して中火にかけ、固形ブイヨンを加える。
ブイヨンやフォンドヴォーはプロの料理人に任せておけばいい。家庭で作ったら材料の調達から手間まで大変なことになります。

3) 80°くらいになったら
(計ったことありません。指先を突っ込んで「あっちっちっ!!」くらい
粉ゼラチンと、あればドライシェリーを加えてよーーく混ぜる。手動の小さな泡立て器でシャカシャカやると楽ですね。

4) ジップロックなどの容器に移したら、氷水を入れたボールで軽く混ぜながら粗熱を取る。

5) それに水気を軽く切ったツナ・適当に切ったアンチョビ・生クリームを加え、ハンドミキサー でウィーーーンとかき混ぜる。ペロッとなめて味見して塩・黒胡椒で味を整える。

6) ジップロックなどの保存容器で冷蔵庫で冷やす。
冷やしているあいだに、パセリをみじん切り、ピクルスを薄切り、つけ合わせのトマト・キュウリなども薄切りにする。

7) 冷えて固まったら(ゼラチンが足りなくて固まらなくても大丈夫。鍋でもう一度温めてゼラチンを足してよくかき混ぜ、再度冷やせばいいだけ)、皿にポコンと移し、ピクルス・オリーブ・パセリで飾る。

【完成】

横に添えてあるのはアスピック・ゼリーとアボカドソース。

アスピック・ゼリーは余った煮こごりにブイヨンを入れて粉ゼラチンで固めて冷やす。わたしはブランデーをちらっと落としてディルを加えました。
なくたってかまいません。

アボカドソースは彩りを考えて添えたのですが、まったくの無駄でした。
ムースとたいして合わない。無視してください。色を考えるならキュウリでOK。


それだけ食べてもいいのですが、
別添えのパセリのみじん切りとともにラスクにのっけて食べるといっそうおいしい。白ワインがすすみます。


2020年12月10日木曜日

蒸し鶏の香り葱ソース

中華の前菜ですね。
中華料理屋に行くとよく頼みます。
自分でも作るようになった。


ポイントは二つ。

(1) 白ネギとガラスープをしっかり指で揉む。
(2) 鶏肉が熱いうちに葱ソースをかける。冷めてしまってからでは味が鶏肉に移らない。

まずは蒸し鶏を作ります。
以前は蒸し器でやってたのですが、
それに若干のアレンジを加えたやり方でやってます。
時間短縮できるし、蒸し汁を再利用できるところがメリット。

というわけでまずは。

蒸し鶏の作り方

鶏もも肉        2枚
白ネギ           青い葉の部分も含めて1/2本
ショウガ        1片
実山椒           ひとつまみ
                 60cc
                 70cc
                 少々

今回の料理はもも肉1枚なのですが2枚作ってしまう。
厚手の鍋が必要で、わたしの場合1枚だと鍋の大きさに合わない。
高山なおみさんも2枚作ってました。
1枚は別の料理に (一人暮らしの場合、とっておいて翌日に別の料理を作ればいい。それも参考に書いておきます)。

もも肉は余分な皮・脂身・筋を切り取り(めんどくさい人は略して可ですが、この手間で味は変わります)、さっと水洗いしてキッチンペーパーで水気をとり、軽く塩を振る。

蒸すプロセスは簡単なのですが「酒」がけっこう重要だと思います。
酒に限らず、
料理のレシピに出ている「塩」「醤油」「砂糖」「みりん」などの調味料にどういうものを使うかで
味に大きな差が出る。
もちろん凝りだせばきりがない。裕福ではないのでそれほどこだわるつもりはありません。
でも調味料にちょっとお金を出すだけで料理の味は俄然変わります。

イギリス料理はまずいと言われています。
イギリスで1年ちょっと暮らしましたが概してまずい。
そもそもイギリスのジェントルマンは、数十年前まで料理を話題にすることが恥とされていたそうです。食べ物へのこだわりは「男らしく」ない。
寒々とした浴室でシャワーを浴びて平気な顔をして出てくる。
よく言えばストイック、ありていに言えばやせ我慢。
そういう文化的背景があります。フランスと対照的。

そしてわたしが発見したもうひとつの理由は。
塩がまずい。
イギリスでふつうにスーパーで買える塩のなんとまずかったことか。
これじゃあ何作ってもまずくなるよなーー、と思いました。

塩、「食卓塩」ではだめです。
砂糖はきび砂糖 (それほど高くないです。そんなにたくさんつかわないしね)。

何より決定的なのは「酒」です。
わたしは酒飲みなのでおいしい日本酒が床下にたんとあるから料理にはそれを使う。
その分おいしいと自負しています。
酒飲みじゃない方、料理酒をやめてきちんとした純米酒に変えるだけで味が変わりますよ。
(ちなみに「米だけの酒」とかの表示のあるパック入りのもののほとんどは「純米酒」ではありません。法律できちんと表示が規定されているので「純米 (酒)」「特別純米」「純米吟醸」と書いてあれば大丈夫です)

で、蒸し鶏なんですが。
簡単です。

厚手の鍋に水と酒を入れる。
鶏もも肉の幅くらいの長さに白葱を切って鍋の底に置く。その上にもも肉を皮を上にして置く。(なぜ上に置くかと言うと隙間を作って蒸気がまわるようにするため)
そんなに厳密じゃなくてかまいません。あまった葱、薄切りにしたショウガ、実山椒 (なくても可) をもも肉の上にのせて強火をつける。

沸騰したら弱火にして蓋をして15分蒸す。
火を止めて5分余熱を通す (これ大事です。蒸し肉・茹で肉はすぐに冷やしたら味が台無し)。
これで終わり。

で、いよいよ蒸し鶏の香り葱ソース。
やや深さのある皿が必要です。


蒸し鶏の香り葱ソースの作り方


《材料》(2,3人分)

蒸し鶏                もも肉1枚
白ネギ            1/2本
ガラスープ          90cc
ショウガ             1片
実山椒              小さじ1(粉山椒でも代用可)
ごま油                小さじ2
紹興酒                大さじ1
                      小さじ1/2 (好みで小さじ1でも)
葱油 (ツォンユー)     大さじ2(葱油の作り方はクリックしてください)
トマト                1/2~1個
パセリ                好みで適宜

【作る

1) 白ネギは縦半分に切ったあと斜めに薄切り。
ショウガは糸切り(ショウガは皮の部分の香りが強いので、わたしは洗って汚れがひどい部分だけとって皮付きのまま使います)。

実山椒はすり鉢で粗くする (わたしは写真の小さなニンニクつぶし用の鉢を使ってますが、
まな板ですりこぎを横にしてゴリゴリやってもできます)。
トマトは薄切りにしておく。

2) 上の蒸し鶏の作り方で火を止めたあとソースを作り始めます。

3) ボールにガラスープ、白ネギ、ショウガ、紹興酒、塩、ごま油を入れて指でしっかり揉む。

4) 蒸し鶏に余熱が通ったところで鍋から取り出し(熱いのでトングとか使ってね。わたしは素手ですが)食べやすい大きさに切る。まな板がベチョベチョになるので、わたしはまな板にクッキングシートを敷いてその上で切ってます。

5) 鶏肉を皿に並べた上からボールのスープだけを(つまり葱以外を)かけ回す。
30秒ほどおいたら肉に味が染みわたるので、ボールに残った葱を天盛りにする。
実山椒がなくて粉山椒を使う場合には、葱をのせる前にもも肉に粉山椒を振る。

6) もも肉のまわりにトマトを並べる。

7) できれば小さいフライパンに葱油と実山椒を入れてかなり(主観的ですが「ひゃー怖いな」と思うくらい) 熱する。
天盛りにした葱の上にその油をかける。ジャジャッと音がするはずです。

6)好みでパセリをのっけたら、香り高い蒸し鶏の完成です。

【完成】

パセリなかったのでのせてません


補足として。
もも肉2枚を蒸し鶏にしてあまった1枚の食べ方です。
上の高山なおみさんが紹介している食べ方でわたしのオリジナルではありません。
おいしいです。酒のつまみにも最高。

蒸し鶏の辛子醤油の作り方
鶏もも肉        1枚
白ネギ           1/2本
練り辛子・醤油        適宜

白ネギの表の白い部分を細切りにして水にさらしたあとで水気を取る。
食べやすい大きさに切った蒸し鶏を辛子醤油と白ネギで食べる。
それだけです。
でもおいしい。

蒸し鶏を冷蔵庫に入れていた場合は、レンジでちょっとだけあっためた方がいい。
冷たいとおいしくないです。




2020年12月9日水曜日

匿名——『 相棒』Season19

(ネタバレあり。注意)

SNSの奥底まで入ることで人がどのように変貌していくのか、
その入りこみ方が(すでにマスコミ等で指摘されていることですが)とても具体的でわかりやすいし、入りこんだ人がどう変わっていくのかもよく描かれていました。

弁護士・矢坂美月と浅井環奈の連続転落死事件のつながりは何なのか?
その謎解きもしっかりしている。

だが、二人の登場人物にリアリティがない。
次々と女性を食い物にして恐喝するカリスマシェフはあまりに紋切り型。
だから右京の彼への怒りが浮いてしまう。
そして転落死した矢坂美月。
あんなおぼこで弁護士が務まるんかい。

右京から見て異様なくらいに正確すぎる目撃通報をした通報者・飯島智子、
「パッとしない」、自己肯定が弱い人間の襞まで描かれていたと思う。
のだけれど。
彼女の家のまわりの廃棄物の山。
右京はそれに目をとめるし、智子自身も右京の目から廃棄物を隠そうとするのだが。
廃棄物の意味が曖昧なままだと思う。
右京が調べたように智子は夫と別居している。
それがいつからで、廃棄物はそれとどんな関係にあるのか。
そこが曖昧。

最後に。
今回はほぼ特命係だけで捜査と検挙が行われる。
伊丹刑事、どうした?
特命係を野放しにしておいていいんですか?

2020年12月2日水曜日

一夜の夢——『相棒』Season19

 (ネタバレあり。注意)


与党幹事長の娘小早川奈穂美に強引に結婚を迫るキャバクラの客引き宇野健介、
右京と亘はその場面に偶然いきあわせる。
ほどなく小早川奈穂美の婚約者星宮光一が刺殺され、
宇野に容疑がかかるが彼にはアリバイがある。

宇野は奈穂美の携帯から小早川親子の弱みを手にしていたらしい。
しかし宇野は金ではなく奈穂美との結婚を迫る。
小早川幹事長もそれを認めざるをえない。

なぜ宇野は奈穂美との結婚にこだわるのか?
右京と亘がその謎に迫る。

ストーリーはそういうものです。


よくできている。
宇野の屈折した半生とその心理もよく描かれているし、宇野を演じる柏原収史は宇野にリアリティを与えていると思う。

しかし救いがない。
救いのなさを右京の最後の表情があらわしている。
あえて救いを与えずにショッキングなエンディングにしたのは脚本家の思い切りだとは思う。


だけれども。
このエピソードに限定せずにシーズン19のこれまでをふりかえると、二つの点で息苦しい。

ひとつ目は文化がない
コーヒーセレモニーや、時計や、服や、
そういう文化の産物が持っている深い遊びが『相棒』の大きな魅力だったのにどうしたんだ?
「三文芝居」はシェークスピアを使ってたんじゃないかだって?
「人生は舞台だ」なんて誰でも知っているいちばん有名な台詞で、それがさも意味ありげに引用された時点でお里が知れる。

もう一方で、外国人労働者が置かれている過酷な状況など
現在の社会問題への優れた批評意識と怒りに満ちたエピソードも立派だった。

この2点は、他の刑事物の追随を許さない『相棒』の魅力だったと思う。

 
今回の宇野の半生にしても、もっと俯瞰した視点から描けば宇野の屈折が深まったと思います。
社会的な視点への広がりがない。

宇野みたいな救いのなさをかかえてる(「宇野は他人事じゃない」と思う)人はいっぱいいると思う。
そういう人に何を言えるのか。
その覚悟が足りないと思いました。
宇野個人のキャラクターで終わらせてしまった。
救いのなさはそれだと思います。

文化と社会。
『相棒』、そこに力を入れろよ。
そうじゃないと他の刑事ものを圧倒できないぞ。
(『MIU404』とか『朝顔』とかね)


2020年11月28日土曜日

新顔と深まる謎——日本酒の話 その2

 
「日本酒の話」は、6年以上前に気楽に書いたっきり、ほったらかしにしてたのですが
予想外にアクセスがあります。

ほったらかしにしていたのは、
「日本酒の話」を書いた頃からしばらく心身ともに万全ではなくて、
数年間、自分のブログをろくに見ていなかったこともあります。

数ヶ月前にようやく復調の兆しが見えて再開しました。
そしたらほったらかし期間にも見てくださった人がいたことがわかりました。
ありがたい。
だけじゃなくて申し訳ない。
休んでいたあいだに Blogger のインターフェイスが変わったせいか、
「2014・夏ギリシア」に寄せてくれた7人の方のコメントを読めない。
(ので遅ればせの応答もできない)

中断期間の負債みたいなものを返したい気持ちもあって、
再開後は (遅筆のわたしとしては) できるだけ投稿しています。



「日本酒の話」についてですが。
日本酒についてのわたしの基本的な姿勢と具体的な銘柄の紹介をしました。

そこに書いた基本姿勢は今も変わりません。

    1) 純米酒しか飲まない。
    2) 酒米を磨きに磨いた大吟醸は、杜氏の腕の差が出ないし、
    日本酒本来の味の奥行きがないので飲まない。精米歩合 55~60% くらいの酒が
    いちばんおいしいと思う。
    3) 冷やした酒は銘柄ごとの味の個性がわからないので、最低常温で飲む。

それぞれについてもちろんもっと説明しましたが、
日本酒好きなら納得してもらえるだろう、ごく当たり前の基本姿勢です。

とは言え、6年以上前の話。
ここ3, 4年は日本酒より、ワイン、シングルモルトウィスキー、ラムを飲む方が多かったこともあります。その間も日本酒飲んでたけど以前ほどではなかった。
 (多いときは月10升飲んでたからなー)。

この半年くらいでまた日本酒に回帰したので更新する気になりました。
(ちなみに、ワインやウィスキーと較べると確実に日本酒は太りますね)


I. 補足

まずは前回の補足をいくつか。

「天の戸醇辛」は米の雑味を旨みに変えたうまい酒だ、と書きました。
相変わらずの定番種のひとつなんですが、
あらためて気合いを入れて飲んでわかったことがあります。
開けたてはいろんな味の要素がくっきり (別のことばで言うと喧嘩) している。
でも2,3日経つとそれが一体化してすばらしい奥行きになる。


「雑味を旨みに変えた」点で似ているのが、前回触れなかった岡山県の
「竹林ふかまり」
実はこの酒、日本酒を飲み始めた頃に何度か飲んでいるのですが、
30年くらい前の自分の記録を読み返すとこの酒の良さがわかってなかったと思います。
評価が高くない。
でも今飲むとすばらしい。
もう開けたてから味の一体感があります。濃醇かつ角がない。最初から渾然一体。
そこが「天の戸醇辛」との違い。
逆に、角がないから強烈なアッピールがないと感じる人もいると思います。それがメジャーじゃない理由なんでしょうが、この酒はほんとにうまい。
「天の戸醇辛」「竹林ふかまり」どっちも好きです。

ちなみに「竹林」にはもっと精米した (=値段の高い) ものもありますが、そっちは吟醸香があるのでわたしの好みは「ふかまり」です。
ここの酒蔵の社長、「うちの酒は100°Cでも大丈夫です」と豪語しているそう。
さすがにそこまで暖めたことないですが、熱燗でまったくへこたれない、どころかうまさが際立つ。鍋には最高ですね。

もひとつ補足。

新潟の酒は好みでない。だけれど、「越乃白雪」は、開栓したては水みたいなしょうもない酒だったけど、開栓して1ヶ月以上流しの下にほったらかしにしていたら「すーーーーんばらしい味」に変貌していたと書きました。あれは「特別純米」です。

数年前に新潟出身の先生が退職する際、
「歩きのオス先生、お好きな新潟の酒があればさし上げたいです」
と言ってくださった、ので迷わず「越乃白雪」と言ったら
なんと!
「純米大吟醸」をいただいた。
すでに書いたように、わたしは「純米大吟醸」を飲みません。米を削りすぎてボディーがないことが多いからです。
でも「越乃白雪純米大吟醸」は開けたてからすばらしく濃醇なボディーがありました。
開けたての「特別純米」の「水みたいなきれいさ (わたしの中ではマイナス評価のことばです)」が微塵もない。
どーしてなの??
何年も飲んでないのですが、いつかもう一度「特別純米」を飲んで確かめたいと思ってます。
日本酒、奥が深いです。


II. 新顔


ガツンと響いた新顔たちです。

新顔1番目は岡山県の「宙狐 (ちゅうこ)」。

「純米原酒」をネットで取り寄せてしびれました。
濃醇で角がなくうまい!!

と思ってたら、いい居酒屋に置かれるようになった。
そしてあっという間に手に入らなくなった。

残念だと感じると同時に、
「いやー、旨さって共有できるもんなんだな」とも思いました。
「山廃純米」はなんとか手に入るのでこれを飲んでます。
これもうまい。
山廃の香りは強くありません。千歳飴のような米っぽさ、苦み、酸味が渾然一体。
ボディーがしっかりあるので料理と飲むとよけいにすばらしい。



次は最近評判がいいので買ってみた千葉県の「不動」
どれにしようか迷って「ひやおろし酒こまち純米吟醸生詰め原酒」に。
うまい!!
香りが面白い。
パイナップルみたいな立ち香 (鼻でわかる香りです)・含み香 (ゴクリと飲んだときに鼻に抜ける香りです)が、いきなりではなく「遅れて立ち上がってくる」感じ。そこが面白い。濃醇だけれどバランスが良い。

「不動」の香りは「吟醸香」に分類されるんだと思います。
わたしはどちらかというと吟醸香が強い酒は好きではない。
しかし「不動」を飲んで吟醸香の認識がちょっと変わりました。

吟醸香があってもボディーがしっかりしていれば気にならない、
ときにはお互いの相乗効果でいっそううまくなる。

米を削って評判の「獺祭 (だっさい)が苦手なのは、吟醸香の強さもさることながら、
ボディーがないので (ま、「きれいな酒質」と言う人もいると思いますが) 香りのくどさが際立つからです。わたしにとっては「臭くてたまらん酒」。料理といっしょに飲むとよけいにくどい。
(付言しておくと。「獺祭」の「磨き二割三分」をいただいて飲んだことがあります。米を77%削ってる! ここまで削るとさすがに吟醸香も出ないようです。でもなんで高い金を出してこんな水みたいな酒を飲まにゃーならんのかと思いました。いただいた方には申し訳ないですが)

でも「不動」は違う。
わたしの苦手なマスカットみたいな吟醸香ではなくて、パイナップルみたいな香りだということもあるんだけど、しっかりしたボディーと吟醸香がタッグを組んでいる。
だから中華料理と飲んでもまったく違和感がありません。
ただし原酒で17°あるのでけっこうまわります。
「不動」のほかの銘柄も飲んでみたい。

そして新顔3番目は群馬県の「土田」
菩提酛×山廃酛

個性的な酒を造る酒蔵です。
最初に飲んだのが「菩提酛×山廃酛」。
変わった作り方のようです。ヨーグルトのような柔らかな酸味。うまい。

でも、土田でいっそうのお気に入りは
「イニシャルRスペックII 生酛純米酒」
名前からして個性的。
蔵に住みついた酵母を選抜して生酛作りをしているのですが、
精米歩合がなんと 90%!!
「獺祭」と真逆の道を行く堂々たる酒だと思いました。

裏ラベルに「常温保存必須」とあるのがいい。
ワインほどではありませんが、日本酒も時間経過で味が変わる。
わたしは数種を一升瓶で買って、それぞれ1〜2ヶ月、ときには3ヶ月かけて味の変化を楽しみます。
「冷蔵保存」と書いてある一回火入れの「ひやおろし」(秋あがり)も床下で常温保存です。
それでへこたれるような酒はだめな酒だと思ってます。
「土田」は自信があるんですね。
イニシャルRスペックII

はっきりわかるバナナの吟醸香。それにハッカもあるのかな。
そういういい香りが余韻にもふわーーーっと続きます。
「菩提酛×山廃酛」ほど強くはないが、柔らかな酸味がすばらしい。
料理を引き立てます。
まだ合わせていませんが、中華の茹で豚の料理、白片肉 (茹で豚肉の甘味噌)とか回鍋肉 (ホイコーロー) にも合いそう。


新顔最後は奈良の「百楽門 備前雄町純米大吟醸」
「大吟醸」なんですが精米歩合50%なのでわたしの許容範囲。
これも吟醸香があるのだけど、甘み・酸味などとのバランスが良く、料理の邪魔をしない。


たいした舌じゃないけれど、赤ワインのブドウ品種はけっこうわかります。
フランス出のブドウでは、カベルネ・ソーヴィニョンとかシラー(メルローはそんなに好きではない)、個性派のマルベック。
スペインのテンプラニーリョ、ガルナッチャ、モナステリオ。
イタリアはブドウのバリエーションが豊かでそれぞれ個性的。
有名なトスカーナのサン・ジョヴェーゼをはじめとして、
バラの香りがするマルケ州のラクリマ・デ・モッロ・ダルヴァとか、
プーリア州のネグロ・アマーロとかプリミティーヴォとか。

酒米はそこまでわかりません。
山田錦は全般に奥行きがある気はする。強力 (ごうりき)と亀の尾はどれもうまいのだけれど、米のせいなのか酒蔵の腕のせいなのか判断できない。
ブラインドで飲んだら当てる自信はまったくありません。

でも雄町はなんとなくわかる気がする。
わたしの舌では、ものすごく細やかな甘みがあります。

「百楽門」もそうです。雄町の甘みを生かしている。
「百楽門」と並べたのは「昇竜蓬莱きもと純米吟醸雄町」。
これはピンとこなかった。きもとのナッツのような香りと雄町の甘みがミスマッチで味がバラバラ。同じ酒米を使ってもずいぶん違うものです。


III. 深まる謎

新顔のコーナーに入れてもいいのですが、

愛媛の
ひめいちえ 無濾過純米吟醸夏越酒。うまいです。
開けたては味のそれぞれの要素がくっきり (だけど喧嘩はしてない)。
2,3 日すると渾然一体化します。

「日本酒の話」で同じ愛媛の「石鎚」について書いたことなのですが、
この「ひめいちえ」にもミカンの香りがします。
柑橘系の香りというのはまああります。でもそうじゃなくて「ミカンの香り」なんです。
「梅錦」もそうだった。

「愛媛県 日本酒 ミカン 香」とかで検索しても、
「愛媛県の酒はミカンの香りがする」という記事にヒットできませんでした (ミカンリキュールは作っているみたいですが)。
わたしの鼻がおかしいんだろうか?
でも何度飲んでも確かにミカンの香りがする。
以前は、道具にミカンの木を使ってるんだろうか、と書いたのですが謎です。
「ひめいちえ」でその謎がいっそう深まった。

もういちど書きますが、わたしの鼻、おかしいんでしょうか?