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2026年3月18日水曜日

どうなる?『ラムネモンキー』

フジテレビ『ラムネモンキー』、今夜の最終話を残すのみになりました。 
初回から毎回、予想もつかない展開。 物語は二つの時間軸に沿って進みます。 

 1988年
   舞台は神奈川県田辺町の中学校。映画研究部の3人の男子、
  「ユン」=吉井雄太「チェン」=藤巻肇(はじめ)、「キンポー」=菊原紀介(きすけ)の3人組は、 
  レンタルビデオ店の奥部屋を部室にしてカンフー映画を製作している。
  美術の臨時教師「マチルダ」=宮下未散(みやしたみちる)が彼らを見守る。

2025年
  51歳になった3人はそれぞれの人生を歩んでいる。
  
  ユンは兄吉井健人が取締役を務める「田澤物産」の営業部長だったが、身に覚えのない
  贈賄事件の被告として裁判を待つ身。事件はマスコミでも報じられ、
  妻と高校生の娘との関係は崩壊寸前になっている。

  チェンは夢だった映画監督になったものの、今は泣かず飛ばず。
  糊口をしのぐために鼻持ちならない成り金社長の伝記映画を製作せざるを得ない。

  一人故郷に残ったキンポーは漫画家になる夢を諦めて、家業の小さな理髪店を
  継いでいる。女手ひとつで育ててくれた母親は認知症。

田辺町で身元不明の白骨死体が発見されたというキンポーからの電話で、三人は37年ぶりに故郷に集まる。3人はマチルダが失踪したことをようやく思い出し、工事現場で骨を発見した女子大生、
西野白馬(にしのはくば)とともに発見現場に行き、ドロの中から見つけたボールペンから、
遺体がマチルダであると確信する。

マチルダはなぜ殺されたのか? 犯人は誰なのか?

ロートル中年3人組と西野白馬は、3人組が思い出す妄想を交えた記憶を手がかりに37年前の真実に迫ろうとする。

それがストーリーの骨格です。

しかし。
「ラムネモンキー」は単なる推理ドラマではありません。

最初に「初回から、予想もつかない展開」と書きましたがそれも当然。
各回の冒頭は、3人組が思い出した妄想混じりのエピソード。
3人組は中学生の記憶をある意味で失ってしまっていたのです。
そのエピソードをひとつひとつ確かめていく過程で、1998年の記憶の「妄想」から「妄想とはちがう真実」が少しずつ明らかになっていく。

それにつれて3人は、あの中学生時代がマチルダに支えられていた「輝く時間」だったことを再発見していきます。その再発見が、2025年を生きる彼らが抱えている空白感を埋めていく。

別の言葉で言えば。
中学時代の「輝く時間」を思い出すことで、現在の「わた」しが生きていく力を獲得していく。そしてほんとうの意味での「大人」になっていく。

でもそれは同時にとても辛い真理探求です。
過去のむごい真実、自分たちを取り巻いていた残酷な人間関係や社会にあらためて直面させられる。
そんな残酷な人間関係や社会の中で、謎に満ちた女性マチルダがどれほど自分たちを愛してくれていたかをはじめて認識する。

切ない。
この切なさが「ラムネモンキー」の魅力。



このドラマにインスピレーションを与えているのは、スティーブン・キングの中期の傑作『IT(イット)(1986。邦訳は小尾芙佐訳 文春文庫全4冊)だと思います。

1950年代のアメリカ、メイン州の地方都市のいじめられっ子ローティーンの仲間が、
町を襲う怪物の存在に気づき、恐怖と戦いながらその怪物に致命傷を負わせる。
だけれどもその恐怖のあまり怪物との戦いの記憶を失ってしまう。
仲間たちとの輝く友情の時間の記憶も失ってしまう。

数十年後、いじめられっ子グループはそれぞれ社会的に成功しているんですが、
それぞれなにがしかの「空白」を抱えている。要するにほんとうの「大人」になりきれていない。

故郷に再び怪物があらわれて人を殺していく。故郷にただ一人残った仲間からの電話でいじめられっ子グループの記憶がよみがえりはじめ、故郷に再び集結する。
過去に誓った「約束」どおりにあの怪物(ITイット)にとどめを刺すために。

その戦いを通じていじめられっ子グループたちは過去の記憶を少しずつ取り戻しながら、
中年の戦う力を獲得していきます。そして現在の自分たちの「空白」が埋まっていく。

ローティーンの輝いていた時間が、その当時のロックや映画やプロレスの引用で切なく描かれます。
「ラムネモンキー」も同じ。ジャッキー・チェンの『酔拳』(「ラムネモンキー」はもちろん「酔拳=ドランクモンキー」のもじり)だとかマイケル・ジャクソンだとか。

そして。
怪物(ITイット)が過去に死ななかった理由も似ている。
怪物は町に巣食う「暴力の歴史」を力の源泉にしているのです。
そのあらわれのひとつがいじめられっ子グループを襲う不良グループ。
「ラムネモンキー」でも3人組は隣の二中の不良グループにいじめられます。

もっと大きな暴力が『IT(イット)では描かれる。人種差別や同性愛差別。
そういう悪をエネルギー源にして怪物は蘇る。
前回の「ラムネモンキー」でそういう社会の大きな邪悪が明らかになりました。
田辺町の再開発計画。
「社会の木鐸」である新聞記者を目指していたユンの兄健人は開発会社に取り込まれてしまう(その結果、現在の「田澤物産」の取締役にのぼりつめている)。
キンポーの親たちも開発会社に金をもらって懐柔されてしまった。
田辺町にはそういう悪の力があったし、現在まで続いている。

「ラムネモンキー」が『IT(イット)』のパクリだと言っているのではありませんよ。
『IT(イット)』がとても普遍的なテーマを提示していて、その普遍性がいろんな作家の創造性を喚起する、ということです。
(たとえば『IT(イット)』のすぐあとにキングと同じホラー作家ロバート・マッキャモンもほぼ同じ骨格の小説を書きましたし、日本にもハードボイルド作家の小説があります。原尞だと思ったんだけど著作リストに出ていないので勘違いらしい。手元に見つからないのでどなたか教えてください。マッキャモンのは駄作ですが日本のはけっこう良かったです)

「ラムネモンキー」は、「過去の記憶を巡る切ない探求」というすぐれた文学の型のひとつだと言ってるんです。


で。
前回、それまで無関係だと見えた過去と現在のつながりがはっきりした。

最終話はどうなるのか?

わたしの興味は3つです。

その1
贈賄事件について兄はユンに「罪を認めて情状酌量・和解を求めたほうがお前にも会社にも得になる。そうしろ」と言ってきた。ユンはとりあえず納得しているのだが、田辺町の過去と兄のつながりが明らかになった今、ユンは裁判にどうのぞむのか?

その2
キンポーは認知症の母の訪問介護に来ているシングルマザー三島ひろ子に紳士的な恋心を抱いている。彼女がマチルダの娘らしいことは顔を見ればわかります。二人はどうなるんだろう?

その3
3人組がマチルダと交わした「約束」は何だったのか?
スティーブン・キング『IT(イット)』でも最後の山場は過去の約束の場面でした。
「ラムネモンキー」は、「約束」を通じて『IT(イット)』にどんな応答をするのだろう?

2026年3月8日日曜日

トランプの「無条件降伏」発言

イラン攻撃についてトランプは、攻撃の収束はイランの「無条件降伏」によってしかありえないと発言した。

イランのペゼシュキアン大統領は「『無条件降伏』はアメリカが墓場まで持ってゆく夢だ」と応酬した。


まず、「『無条件降伏』はアメリカが墓場まで持ってゆく夢」だというペゼシュキアン大統領の表現。強がりだと受け流す人が多いんじゃないかと思いますが、わたしはこの表現にイランの詩文化の伝統を見ます。

日本ではあまり認識されていませんが、イラン (ペルシア) はルネッサンスまでは中国とならぶ世界文化の最先端の地域でした。それまでのヨーロッパはペルシアや中国とくらべればド田舎に過ぎません。世界で最初の大学はオックスフォードでもケンブリッジでもなくペルシアにありました。

当然文化のレベルも高い。ハーフェズ、フェルドウシ、ウマル・ハイヤームなど文学史に燦然と輝く詩人を排出しています。

そしてとりわけ日本では理解しにくいことだと思うのですが、その立派な詩の伝統が現代のイランの日常にも浸透しています。(実はこれはイランに限らず欧米文化にも見られることなんですが。みなさんはなんでもいい、詩を暗唱できますか? 管見の限りでは欧米の教養ある人たちはけっこう詩を読んでいて詩を暗唱できる。だから偉いという話をしてるんじゃありません。社会の中での詩の重要性の違いを言ってるんです。その違いを知っておくことは大事なことですよね。)

「『無条件降伏』はアメリカが墓場まで持ってゆく夢だ」にわたしはそういう体に染みついた詩的な感覚を感じます。(ちょっと違う意味で、わたしは北朝鮮や中国が他国を罵倒する際のレトリックにもそれぞれの文学的伝統を感じます。笑っちゃうくらい見事ですよね)

これ、意外に大事なことだと思います。とりわけ外交において。

イランと外交するならば詩を引用することから始めるべきだと思います。そう助言できる外務省の人間はいるのでしょうか? (実はいるんじゃないかと思ってます。ただそういう人を政治家が気にもとめていないということでしょう。文学をあなどると外交という実利で気づかない失態を犯す。文学研究はそういう意味で「実学」なんですが)


「まず」と上に書いたので「次」を書かなくちゃいけないのですが、気が重い。

「無条件降伏」についてです。


「無条件降伏」は過去それほど使われたわけではありません。「無条件降伏」がそもそも何なのかについても論争があるようです。とりわけ第2次世界大戦で日本が連合国に対して受け入れた「無条件降伏」については(その諸問題については不十分ながらウィキペディアがとっかかりになります)。

日本に対する「無条件降伏」をもっとも強硬に推し進めたのはアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトであり、その基本方針によって戦後日本の方向は定められました(若い方々、第2次世界大戦後、日本が独立国ではなかったことをご存知でしょうか)。天皇制をどうすべきかも最終的にはアメリカによって決定されました(この辺の複雑な事情とその現代における意味については、白井聡国体論 菊と星条旗(集英社新書 2018)がとても示唆に富みます)。

勝ったアメリカは、見事に日本を自分に忠実な (親米的な) 国家に育て上げることに成功します。民主主義国家と化し、経済的にも成功させ、その首脳たち (自民党) をアメリカの犬にしました。その極限の姿がトランプの横でニコニコと嬉しそうに飛び跳ねる高市首相です。

アメリカはCIAの策謀などを用いて一旦はイランに親米国家をうちたてることに成功しましたが、それはイラン革命によって覆されて現在に至っています。

トランプの「無条件降伏」発言を聞いたとき、わたしがまず感じたのは、トランプが第2次世界大戦と現在に至る日本をイランのモデルケースにしているのではないかということです。

日本に対してはこれほどうまくやったではないか。高市は忠実にしっぽを振っている。イランにもこれが応用できるはずだ、と。

もしそうだとすると、わたしがもっとも恐れることは、

トランプが、かつてアメリカが広島と長崎に対して行ったように、イランに核兵器を使うことです。大いに可能性があるとわたしは思う。

アメリカのイラン攻撃はだからわたしたち日本人にとって他人事ではない。被爆国日本が、戦後の今までの対米のあり方がほんとうに問われている。

高市首相、イラン攻撃に態度表明をまったくしていない。一国の首相として考えられないのらくらだ。

どうする、高市?

そしてわたしたちはどうする?

 

2026年3月3日火曜日

Operation Epic Fury は「壮絶な怒り」作戦か?

 アメリカがイランへの攻撃を開始した。

これが国際的な違法行為であることは言うまでもない。

イランの核兵器開発を擁護するつもりはさらさらないが、自分が核兵器を持っているのに他国がそれを持つのを許さないというのはそもそも理屈としてなりたたない(イランはテロ国家だから核を持たせるのは危険だと言うのなら、アメリカが昨今やっていることだってテロ行為そのものじゃないでしょうか)。「私たちも核兵器を放棄します」、そこまで行かずとも、「核兵器を縮小することを目指します」くらいの立場を表明してから交渉するのが筋だと思う。

アメリカは交渉の最中に敵国の首脳を殺害した。これは無法以外の何物でもない(トランプ自身は承知の上かもしれませんが)。


しかしアメリカが戦争を始めたことが、今日の話題ではありません。この戦争に付随する一つの、些細に見えるけれどもけっこう大事なことが話題です。

アメリカが今回のイラン攻撃の作戦をOperation Epic Furyと名づけた意味と、それを「壮絶な怒り」作戦だと報じている日本のマスコミの見識のなさはいかがなものか。

epic を「壮絶な」と訳すことは可能かもしれません。ただし、それはかなりの意訳であって、epic の派生的な意味にすぎない。

とりわけ epic が fury 「怒り」と組み合わされた場合、少なくとも高等教育を受けた欧米人なら epic の本来の意味である「叙事詩の」「叙事詩的な」を思い浮かべると思います。

「叙事詩の怒り」とは何か。

ヨーロッパ最古の叙事詩ホメロス『イーリアス』に描かれるギリシアの英雄アキレウスの怒りです。『イーリアス』の最大の主題がそれであり、数千行におよぶ『イーリアス』の冒頭の単語もアキレウスの「怒り」です。

『イーリアス』は伝説のトロイア戦争の最後の数十日間を描く英雄叙事詩。ギリシアNo.1の英雄アキレウスの怒りの展開が『イーリアス』の屋台骨です。

それを詳述することはしませんが、アキレウスの怒りが頂点に達するのは親友パトロクロスの死後。アキレウスは怒りを燃やしてトロイア軍をなぎ倒し、パトロクロスを殺したトロイア方の英雄ヘクトールと一騎打ちの末のヘクトールを殺します。

ヘクトールは死ぬ間際に命乞いをするのですが、アキレウスは容赦なく殺し、その亡骸を自分の戦車につないでずたずたになるまで引きずり回します。

欧米人の多くは、そしてアメリカ軍首脳部のエリートたちも、高校などの教材で『イーリアス』を読んでいる。epic furyという句はそれを背景にしている。

だからあくまで「叙事詩『イーリアス』の怒り作戦」、それが日本人に多くの説明を要することを考慮するなら、「英雄アキレウスの怒り作戦」と訳すべきだと思います。大手通信社だかAIだか知らないが「壮絶な怒り」という杜撰な訳を検討もせずに採用するのはいかがなものか。

「些細に見えるけれどもけっこう大事なこと」だと上に書いたのは、この作戦名にアメリカの(一部の)世界観が露骨にあらわれていると思われるからです。

彼らはイラン攻撃に「野蛮な異文化トロイア」と戦う「文明国ギリシア=アメリカ」を重ね合わせている。ひとことで言えばエドワード・サイードが主張した「オリエンタリズム」です。アキレウスがヘクトールにしたように、我々はイランの首脳を命乞いをしてもずたずたにしてやるぞ、という態度表明です。「壮絶な怒り」という訳ではそれが見えてこない。

重要な補足をすれば。

以上のオリエンタリズムを『イーリアス』に読み取るのは(往々にしてそう読まれがちなのですが)『イーリアス』の誤読です。

トロイアは現在のトルコ北部ですが、『イーリアス』はトロイアをアジアの異文化の国家だとは見ていない。自分たちギリシア人と同じ価値観・社会構造を持つ敵として描いています。

さらに。

『イーリアス』は最後の最後で「アキレウスの怒り」に大どんでん返しを与えています。

アキレウスは怒りをおさめたわけではない。しかし『イーリアス』の最終歌で、息子ヘクトールの亡骸を返還してもらうために決死の覚悟でギリシア軍のアキレウスのもとを訪れた老王プリアモスの悲しみに打たれたアキレウスは、敵の王プリアモスと食事をともにして、戦う者どおしの悲しみと苦しみを共有し、ヘクトールの亡骸返還を約束します。

epic fury と名づけたアメリカ首脳たちは『イーリアス』の最後まで視野に入っているとは思えない。敵に対して怒り狂うアキレウスだけです。

願わくは、アキレウスとプリアモスの食事まで視野に入れて欲しい。そしてその食事に向かうことを日本政府はアメリカに訴えるべきだと思う。それが外交というものでしょう。






2022年11月24日木曜日

カナダ1週間の旅 その1

妻と娘と3人でトロント在住の息子に会いに行くために
駆け足でトロントとモントリオールを旅行してきました。

もっと早い時期にして『赤毛のアン』の舞台プリンス・エドワード島にも行きたかったのですが、いろんな事情で11月にせざるを得ませんでした。プリンス・エドワード島ツアーはもう終了しています。

それでも充分楽しみました。
細かなことを忘れないうちにと思って久しぶりの投稿です。


11/14トロント着。
息子が迎えに来てくれました。数年ぶりの再会です。

チェストナット・ストリートのDoubletree by Hilton Toronto Downtownにチェックイン。
ヒルトンの名前が入っていますがビジネスホテルに毛が生えたくらいのレベルです。
格別不満もありませんでしたが。
トロントを東西に走るメインストリートのダンダス・ストリートからちょっと入ったあたり。


ホテル近くのダンダス・ストリートは日本街になりつつあるらしい。
「辻利」もあるし牛丼の店もある。韓国・中国系の店も多い。
写真は「韓国ドンカツ」の店。
食べてないのでわかりませんがトンカツを韓国風にアレンジしたものか?
Kyoto Houseを名乗る
怪しいレストラン
右隣は日本の薬局で息子がよく利用しているそうです。

ホテルすぐそばの Kyoto Japanese の看板がある店は
息子によれば日本料理ではなく中華なんだとか。

夕食のために地下鉄ダンダス駅がある広場に戻りました。
ユニクロやH&MやMujiがあります。

そこから北に少し歩いて中華の「コンジー・クイーン (Congee Queen)」へ。
中国粥が売りの割に新しい店だそうです。



おいしかった。
中国粥はピータンと濃い味をつけて細かく裂いた鶏肉を入れたもの。
ビーフンは海老とインゲンが具の上品な味つけ。


そしてツルトロの麺に挟まれた海老。
昔、横浜中華街の海老料理がやたらにおいしい「ル・パルク」で食べて感動したことがあったので、メニューの写真を見て反射的に指さして注文したのですが名前がわからんのですよ。
幅広麺の大拉皮 (ダーラーピー)とか粉皮 (フンピ) じゃないかと思うのですが、ご存じの方は教えてください。


以上の3品はどれも淡泊な味つけだったのですが、
チャーハンがアクセントになりました。
固く炊いたタイ米にビーンズソースみたいなので濃い味つけがしてある。
欲を言えばパクチーを散らしてほしかったのですが、
ユニークな味で、頼んだ料理全体を引き締めてくれた。
大満足。

2021年3月19日金曜日

海老と春キャベツのジェノヴェーゼソース・パスタ


春キャベツがおいしい季節です。
豊かな香りの海老パスタはいかがでしょうか。

ジェノヴェーゼソースは、バジリコに松の実などを加えた香りの強いソースですが、
これに「東のパクチー」「西のディル」と呼ばれる (?) くらい横綱級の香りのディルを合わせます。

ディルは不思議なハーブで、それ自体の香りが個性的なのですが、
他のハーブと組み合わせると相乗効果で香りがいっそう引き立ちます。

また、ジェノヴェーゼソースにはアンチョビを加えるのが正式だと思うのですが、
市販の瓶詰めには入っていません
 (入ってるのもあるかもしれませんがわたしは見たことがない) 。
味にコクを出すためにアンチョビを加えます。

生クリームを加えるのは味をまろやかにするため。少量にとどめます(牛乳や豆乳でもいい)多いと「ジェノヴェーゼクリームソース」になってしまって春キャベツには重すぎます。

パスタが茹で上がる直前にソースが完成しているのがベストです。


海老とキャベツのジェノヴェーゼソース・パスタの作り方


《材料》(3人分)

パスタ                270g
むき海老            180gくらい
春キャベツ       たくさん(計ったことない。1/3個くらい? 熱が入るとカサが減ります)
マッシュルーム   1/2パック
ディル               適宜(好みによりますが、わたしは小さいパックだと2/3以上、大きなパック
                                だと半分近く使います)
アンチョビ         3枚
ニンニク            1片

ジェノヴェーゼソース          大さじ6~7
白ワイン (または純米酒)   大さじ2
生クリーム         大さじ1
黒胡椒               適宜
EVオリーブオイル     適宜
                     適量



【作る

1) しっかり塩を入れたたっぷりの湯を沸かし始める。

2) むき海老は背わたがあれば竹串などでとる。塩少々と片栗粉をふってもみ洗いしたあと、ザルに受けて洗い流し、ペータータオルなどで水気をとる。大きめの海老なら二つのそぎ切りに。

今回のキャベツの量はこのくらい。
手前はマッシュルームとキャベツの固い部分。

2) ディルは洗って水気をとったら葉の部分だけを大雑把に切る。マッシュルームは薄切りに。キャベツはざく切り。固い部分は捨てずにそぎ切りにして別にしておく。
ニンニクは包丁の腹で体重をかけて押しつぶし、皮と根本の部分をとってみじん切りにする。アンチョビもみじん切りです。

3) パスタを茹で始める。指定時間より1分ちょっと短めにゆでます。フライパンにオリーブオイルを入れ、中火でニンニクとアンチョビを炒める。アンチョビを炒めるのは臭みを飛ばすためです。

4) マッシュルームとキャベツの固い部分を加えて炒める。(隣の鍋のパスタがくっつかないように菜箸で何度かかき混ぜる)

5) ジェノヴェーゼソースとパスタのゆで汁をお玉に1杯強加える。そこに海老を入れたら白ワインをふり、強火でアルコール分を飛ばす。

6) 生クリームを加え混ぜ、すばやく味見をして足りなければ塩を足す。「ちょっとしょっぱいかな」くらいで丁度いい。

すぐにカサが減るので大丈夫
7) キャベツをドサっと入れて混ぜる。たぶん、パスタのゆで上がりの1分30秒くらい前だと思います。キャベツを一気にやわらかくするために強火。パスタのゆで汁が足りないようなら足す。


8) パスタが茹で上がったらしっかり湯切りをしてソースに加え、強火のまましっかりあおる(あおるのができない人はトングで激しくかき混ぜる)。黒胡椒をペッパーミルで挽く(なくても可)。

【完成】

皿に盛り、ディルをのせたら完成です。




2021年3月17日水曜日

「暗殺者への招待」——『相棒』Season19

(ネタバレあり。注意)

白バイ警官・出雲禮音 (いずもれおん) が銃撃されたSeason19「プレゼンス」の後日談。
Season19を締めくくる2週連続の長尺です。

「プレゼンス」で銃撃事件の実行犯として逮捕された朱音静 (あかねしずか) は、
「IT長者の加西周明 (かさいしゅうめい) から6億渡すと言われ、拳銃も渡されてやった」
と供述した。

ヴァーチャル国家「ネオジパング」を動かす加西は、しかし、右京と亘の捜査にもかかわらず、
無傷のままだ。

今回のエピソードでは、取り調べを受けている静が、
「加西の指示だった」という前の供述がでたらめだったと弁護士・中郷都々子 (なかさとつづこ) に伝える。

いったいどういうことなのか?
右京と亘が動き出した矢先に、
前のエピソード「プレゼンス」で加西に踊らされてビルから転落死した幸也の母・蒔子 (まきこ) があらわれる。
蒔子は幸也の死後、幸也の恋人だった静をなにくれとなく世話しているらしい。

静の証言撤回の裏には金が動いていたようだ。
拘置所にいる静に代わって金を受け取ったのが蒔子だ。
右京はそう推理する。

折も折、
蒔子が右京に「とんでもないことをしてしまった」と泣きついてくる。
なんと蒔子は闇サイトで加西殺害を依頼してしまったのだと言う。

ここまでが先週。

わたしの予測は。
静が、加西およびその後ろ盾から金を受け取って証言を翻したものの、
実は加西の裏をかこうとしている。
そういうものでした。


で、いよいよ今回。
わたしの予測は当たっていて外れてました。
静が裏をかこうとしたのはほんとですが、
裏をかかせようとした奴がいる。
そういうとても複雑なストーリー。


とても複雑なストーリーだし、
策略を画策した (=静に裏をかかせようとした) 
内閣情報調査室の庸子 (まさきようこ) は逮捕されたものの、
柾を動かした内閣官房長官・鶴田は無傷のまま。

(ここまで書いてきて『相棒』の登場人物の名前、国家公安委員長の鑓鞍 (やりくら) を含め、凝り過ぎだよ、と思います。コメントを書くにもいちいち公式サイトで漢字を確かめなくてはならん。もうちょっとふつうの名前にしてくれえ)


なのだが。
けっこうカタルシスがあった。

カタルシスのひとつめは。
鼻持ちならない弁護士・中郷都々子が煮え湯を飲まされたこと。

もっと大きなカタルシスは。
証拠は握れなかったものの、
鶴田官房長官への右京と亘の宣戦布告。

今回、一度目の鶴田との会見で、
右京は歯に衣着せず自分の推理を披露する。
「あんたが黒幕でしょう」と。
それを亘がひきとって、
「申し訳ありません。この人、こういう人なんで」
と頭を下げる。

だが、二度目の会見で、
右京が「あなたが黒幕でしょう」
と同じようなことを言った後、
亘は前回と同じように鶴田に頭を下げて言う。
「申し訳ありません。われわれ、喧嘩を売りに来てるんで」
亘、かっこいいぞ。

このところ無難な態度をとっていた出雲麗音がふたたび危うさを炸裂させていた。
今後、禮音をどう描くんだろう。
描きようによってはものすごくおもしろくなりそう。

静もこれで終わりそうもないし、
鶴田への宣戦布告後の展開やいかに?
Season 20への布石もあって、まあ満足かな。



ボロネーゼソースのパスタと旨安赤ワイン


ボロネーゼ (ボローニャ風) ソースはいわゆるミートソースです。

定番のパスタだからネットにもたくさん記事が出ているので、
屋上屋を架さないようにざっと見て、
落合努先生その他の本も確認しました。

その結果、わたしなりの工夫があるものとして投稿してもいいかな、と思いました。


外してはいけないポイントは

(1) 飲んでおいしい赤ワインを加えてしっかり煮込むこと。
(2) 最後にかけるチーズは市販の「粉チーズ (パルメザンチーズ)」ではなく、ほんとのパルミジャーノ・レッジャーノを削ること。

の二つです。


塩味系ソースやクリームソースは、
パスタが茹で上がる直前にソースを完成させるのがベストですが、
ボロネーゼソースは煮込みます(落合努の店は数時間煮込むそうです)。
数時間もかけるエネルギーはないので、パスタを茹で始めるくらいまでにソースを完成させて、パスタを茹でる時間だけ煮込んでいます。
(もちろんもっと煮込んだ方がよろしいんでしょう。ご自由に)

「飲んでおいしい赤ワイン」はもちろんピンからキリまであります。
要は料理用の赤ワインじゃだめだということ。

お金のある方はいくらでもぜいたくなワインをどうぞ。
わたしには無縁な話なので、
最後にわたしなりの飲んでおいしい旨安赤ワインをいくつか紹介します。



ボロネーゼソース (ミートソース) のパスタの作り方


《材料》(3人分)

パスタ                270g (1.9mmくらいの太めの麺がいい)
合い挽き肉         180gくらい (好みで増やしてください)
セロリ             1/3本
タマネギ            1/2 個 
ニンジン        1/2本
マッシュルーム   1/2パック
トマト水煮缶      1缶
乾燥トマト          5~6枚
パセリ                 2~3本
ニンニク             1片

赤ワイン    大さじ3
オレガノ            小さじ1/2
昆布茶               小さじ1/3
黒胡椒               適宜
EVオリーブオイル     適宜
                     適量

【作る

1) パルミジャーノを削る。セロリ、タマネギ、パセリはみじん切り。マッシュルームは薄切り。ニンジンはすりおろす。このすりおろしニンジンがトマトの酸味を和らげ、味の奥行きを出します。ニンニクは包丁の腹で体重をかけて押しつぶし、皮と根本をとってみじん切り。

2) フライパンに油を入れずに合い挽き肉を入れ、中火~中弱火でパラパラになるまで炒める。
肉から脂分がジミジミしみ出してくるので焦げないはず。牛挽肉が正式ですが、わたしは合い挽き肉が好みです。



3) 肉がパラパラになったら、フライパンにちょっと隙間を空けて、そこにオリーブオイルとニンニクを入れる。ニンニクの香りがオリーブオイルに移ったら全体を混ぜて、塩・胡椒。できれば良い塩を「塩味はここで決めるぜ」という気持ちでしっかりふる。セロリ・タマネギ・マッシュルームを入れ、オレガノを指ですりつぶすようにしながらふる。タマネギが半透明になるまで炒める。

4) 赤ワインを加え、強火でかき混ぜてアルコール分を飛ばす。


5) トマト水煮缶を加え、この辺からパスタを茹でる湯を沸かし始める。フライパンに乾燥トマトを調理ばさみで細切りにして加え、すりおろしたニンジンも加える。中弱火にして味見。足りなければ塩を加える。昆布茶を加える (邪道なんだけど、でもひと味違うんです。多すぎたらダメ)。

6) パスタを茹でる。塩味系ソースやクリームソースは指定時間より1分ちょっと短めに茹でるのですが、ボロネーゼソースは麺にソースが食い込みにくいので30秒だけ短めに茹でます。もちろん、その間ソースは弱火で煮込み続ける。

7) パスタが茹で上がったらしっかり湯切りをしてソースに投入。強火にして好みでオリーブオイルを足し回しながらあおる (またはトングで混ぜる)。パセリを散らしてひとあおりしたら皿に盛る。


【完成】

パルミジャーノをのせたら完成です。あなたが酒飲みなら、ソースに使った赤ワインを合わせて食する。わたしはランチでも飲みます (地中海ではそれがふつうだしね)。





旨安赤ワイン

いくらだったら「安い」のかは人それぞれ。
5000円で安いという人もいると思う (そういう人はあっちへ行け。シッシッ!)。
わたしは上限1000円前後です。
(わたしも「シッシッ!」と言われるかもしれません。「チコちゃんに叱られる」に出ていた大学のある先生は「いつもは400円くらいのワインだけど、今夜はテレビに出たお祝いに800円のワインを飲もうと思います」という立派な発言をされていたように記憶しています)

このクラスの「旨安赤」、「悪くはないけどなんてことない」のがけっこう多い。
よく見かけるスペインの「エヴォディア」とか (これを3000円くらいで出してる店もあるけどね)。

で、そんな中、ナンバーワンはイタリア・プーリア州の「グランデ・アモーレ」
「カルディー」にときどき大量に入荷するが、いつもあるわけじゃない。
いかにもプーリア州の赤らしい、果実味たっぷりのフルボディー。
見つけたら持てるだけ買います。
これを造っているワイナリー・ピロヴァノには1500円くらいのもあって (「サレント・ロッソ・パッシート Salento Rosso Passito」) 文句なしにおいしいんだけれど旨安じゃないよね (わたしには)。


で。
写真の「フロンテーラ・ナイトハーヴェスト」「バルカトリーナ」
「フロンテーラ」はチリのコンチャ・イ・トロ。
いろんなリーズナブルな安ワインを出してるワイナリーですがこれはコンチャ・イ・トロの中でも別格です。
800円台前半。
バランス良く奥行きがある。
コンチャ・イ・トロを置いてるスーパーはけっこうあるんですが「フロンテーラ・ナイトハーヴェスト」は、今のところとあるコンビニでしか見つかりません。

キジのエチケットが印象的な「バルカトリーナ」はポルトガル。
ポルトガルのワインは味の割に割高なのですが、
こいつはこの値段からは信じられないほんとのフルボディーです。
けど、ちょっと角があるかな。わたしは好きですが赤を飲みつけてない方は苦手かも。
同じワイナリー (カーサ・サントス・リマ) でもっと安い「バリカス・ティント Barricas Tinto」は角がなく柔らかで、しかし、しっかりしたボディーがあります。
 (ただし、エチケットはこれ以上ないくらい簡素でそっけないので、恋人に勧めたりしないよーに)。

こういう赤を使うといつものミートソースがレストランみたいな味になる (と思う)。