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ラベル 現代文化、日本、『相棒』、 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2021年3月17日水曜日

「暗殺者への招待」——『相棒』Season19

(ネタバレあり。注意)

白バイ警官・出雲禮音 (いずもれおん) が銃撃されたSeason19「プレゼンス」の後日談。
Season19を締めくくる2週連続の長尺です。

「プレゼンス」で銃撃事件の実行犯として逮捕された朱音静 (あかねしずか) は、
「IT長者の加西周明 (かさいしゅうめい) から6億渡すと言われ、拳銃も渡されてやった」
と供述した。

ヴァーチャル国家「ネオジパング」を動かす加西は、しかし、右京と亘の捜査にもかかわらず、
無傷のままだ。

今回のエピソードでは、取り調べを受けている静が、
「加西の指示だった」という前の供述がでたらめだったと弁護士・中郷都々子 (なかさとつづこ) に伝える。

いったいどういうことなのか?
右京と亘が動き出した矢先に、
前のエピソード「プレゼンス」で加西に踊らされてビルから転落死した幸也の母・蒔子 (まきこ) があらわれる。
蒔子は幸也の死後、幸也の恋人だった静をなにくれとなく世話しているらしい。

静の証言撤回の裏には金が動いていたようだ。
拘置所にいる静に代わって金を受け取ったのが蒔子だ。
右京はそう推理する。

折も折、
蒔子が右京に「とんでもないことをしてしまった」と泣きついてくる。
なんと蒔子は闇サイトで加西殺害を依頼してしまったのだと言う。

ここまでが先週。

わたしの予測は。
静が、加西およびその後ろ盾から金を受け取って証言を翻したものの、
実は加西の裏をかこうとしている。
そういうものでした。


で、いよいよ今回。
わたしの予測は当たっていて外れてました。
静が裏をかこうとしたのはほんとですが、
裏をかかせようとした奴がいる。
そういうとても複雑なストーリー。


とても複雑なストーリーだし、
策略を画策した (=静に裏をかかせようとした) 
内閣情報調査室の庸子 (まさきようこ) は逮捕されたものの、
柾を動かした内閣官房長官・鶴田は無傷のまま。

(ここまで書いてきて『相棒』の登場人物の名前、国家公安委員長の鑓鞍 (やりくら) を含め、凝り過ぎだよ、と思います。コメントを書くにもいちいち公式サイトで漢字を確かめなくてはならん。もうちょっとふつうの名前にしてくれえ)


なのだが。
けっこうカタルシスがあった。

カタルシスのひとつめは。
鼻持ちならない弁護士・中郷都々子が煮え湯を飲まされたこと。

もっと大きなカタルシスは。
証拠は握れなかったものの、
鶴田官房長官への右京と亘の宣戦布告。

今回、一度目の鶴田との会見で、
右京は歯に衣着せず自分の推理を披露する。
「あんたが黒幕でしょう」と。
それを亘がひきとって、
「申し訳ありません。この人、こういう人なんで」
と頭を下げる。

だが、二度目の会見で、
右京が「あなたが黒幕でしょう」
と同じようなことを言った後、
亘は前回と同じように鶴田に頭を下げて言う。
「申し訳ありません。われわれ、喧嘩を売りに来てるんで」
亘、かっこいいぞ。

このところ無難な態度をとっていた出雲麗音がふたたび危うさを炸裂させていた。
今後、禮音をどう描くんだろう。
描きようによってはものすごくおもしろくなりそう。

静もこれで終わりそうもないし、
鶴田への宣戦布告後の展開やいかに?
Season 20への布石もあって、まあ満足かな。



2021年1月14日木曜日

「欺し合い」——『相棒』Season19

(ネタバレあり。注意)

給付金詐欺にあった角田 (かくた) 課長。
鏑木亘は角田の息子を装って詐欺グループに潜入する。

詐欺グループのリーダーはどうやら伝説の詐欺師「Z」と呼ばれる人物らしい。
なぜ彼が「Z」と呼ばれるようになったかというと。
かつて「伝説の詐欺師X」なる人物を詐欺で出し抜いたことからつけられた呼称。

何しろ相手は伝説の詐欺師。
潜入した亘はどうやって右京に連絡し、
右京はどうやって詐欺師「Z」に迫るのか?

そういうストーリーです。

詐欺師Zと右京のタイトルどおりの「欺し合い」。
捜査一課の伊丹、芹沢、出雲から角田まで総動員されて詐欺グループとのアドリブ通話が繰り広げられる。

意外や意外の「Z」の正体は明かされるし、なんと!!
「Z」に破れた「X」まで登場する。

その辺りの「欺し合い」はおもしろい。

だけれども。
「Z」と「X」を逮捕する証拠は何なんだ?
状況証拠しかなくて自供しかない。
二人とも自供してくれたからいいようなものの(よくはないかもしれん。裁判で勝てるのか?)自供以外の決定的証拠を右京は提示できなかった。
その証拠まで出せたら右京は「欺し合い」の真の勝利者になれたのにね。


2020年11月18日水曜日

三文芝居——『相棒 Season19』

今日は格別の批評なし。

橋本じゅんの演技力に賭けた脚本がしっかり。
Season19でいちばんのできだったと思います。

あ、シェークスピアの使い方は初心者レベルだと思った。
もっと凝った使い方をしてほしい。『相棒』だからこその要望。

「こてまり」が右京と亘にとって憩いの場ではないことは再確認できたな。
小手鞠が燗をつけに席を外したときに二人は事件の話をしてた。



2016年1月27日水曜日

「伊丹刑事の失職」——『相棒』Season14

(ネタバレあり。注意)

今日の『相棒』、殺人事件の謎解きとして凝ったつくりになっていたと思います。

伊丹刑事が自殺だと判断した女性の死が、独占スクープされた殺人犯の告白手記によって殺人事件だと覆される。
自殺の判断をした責任を問われて失職の危機に瀕した伊丹。
右京は、伊丹のために事件の複雑な背景を明らかにしていく。その過程がなかなかみごとです。

けっこう満足したのですが。


二つ小さな不満があります。

ひとつ目は「伊丹刑事の失職」というタイトル。
『相棒』のファンなら「ついに伊丹が失職するのか。すわ一大事」と思ってしまう。
思ってしまうから見る。
それを狙ったあざとさがあります。

前回の「陣川という名の犬」も、センセーショナルなタイトルでしたが、
それにはきちんとした理由があったと思います。
そのことは前回の投稿で書きました。

でも今日のタイトルは、脚本から肯定できる要素が少ない。
実際には伊丹刑事は失職しないのですから。



ふたつ目は、
脚本の問題というより、監督・演出の問題なのかもしれません。

詐欺事件の被害者の息子、大庭(おおば)が、
犯人をかばい、彼に協力する。

殺された女性は詐欺グループの一員なのですが、
犯人から彼女の写真を見せられた大庭が「この女です」と言ったことによって、
犯人は詐欺の決定的証拠をつかむ。

だけれど。

そのあとに、右京たちから聞き込み調査を受けたとき、
写真を見せられた大庭は同じように「この女です」と証言する。

大庭と女がすれ違うシーンが回想で流れる。
「この女です」ということに大庭がはじめて気づいたかのように。

でも上に書いたように、大庭はすでに女が詐欺グループの一員であることを知っています。(ただし、知っていることが視聴者にわかるのは後半になってから)

だとすれば。
大庭は右京たちに対して、
はじめて気づいたかのように演技をしたことになりますね。

最後まで見終わってようやくそのことがわかったわたしは、腑に落ちなくてしばらく考えました。
なぜ大庭は演技をしたのだろうか?

大庭は犯人(新聞記者)に詐欺を暴いて欲しかった。
それが自殺した母親の復讐になるから。
大庭本人がそう言っています。

そしてたぶん大庭は警察にも詐欺を暴いて欲しかった。
しかし、自分が、女=詐欺グループの一員であると知っていたことが警察にわかると、
警察が犯人にたどりつく可能性がある。
犯人を守りたい大庭は、
だから「はじめて気づいたかのように」演技をした。

わたしはそう考えました。
そして脚本の意図もそうだと想像します。

しかし、
女とすれ違う回想シーンの撮り方は、
ほんとうにはじめて気づいたかのような印象を与えます。
大庭の目から見たアングルの女の顔のアップがありますから。
時系列(ストーリー)は、犯人との場面が先、右京との場面があとですが、
描かれる順序(プロット)は、右京との場面の方が先だからなおさらです。

つまりは、
わたしがいろいろ考えたようなことを封じるようなシーンだと思います。
あえて強い言い方をすれば、視聴者を欺いている。

もちろん、推理ドラマに視聴者を欺くシーンはあっていい。
あっていいけれども、最後に「あ、あのシーンはそういうことだったのか」と納得できるような
ヒントを潜ませておくのがフェアプレイだと思います。
今回はそういうヒントがないだけでなく、
勘のいい視聴者の「勘」が働くのを邪魔するような欺き方(大庭が演技していることを想像させない演出)でした。欺き方がフェアではない。

回想シーン抜きに大庭が右京に「この女です」と言うべきだったと思うのですが。
(あるいは、回想シーンを大庭の視点からではなく別の視点で撮るとか)


以上2点は些細なことかもしれませんが、
ファンだからこそどうしても指摘しておきたくなりました。
あしからず。