東海林さだおがなくなった。享年88。
「パイエーケス人の園」でもけっこう追悼文を書いてきました。追悼文は自分が愛する相手に対して書くものです。
そういう点で言うとわたしは東海林さだおの漫画が好きではなかった。東海林とほぼ同世代の早稲田大学漫画研究会出身で言えば、園山俊二の方が断然好きでした。
だから漫画家・東海林さだおの追悼文を書く資格はありません。
だから漫画家・東海林さだおの追悼文を書く資格はありません。
でもわたしは文章家・東海林さだおには心から哀悼の意を捧げたい。
東海林さだおの文体は、椎名誠や嵐山幸三郎や糸井重里などのいわゆる「昭和軽薄体」に似ているようでいて違う。
随所で笑わせるけれど、あざとくなく、品格がある。
一冊挙げろと言われれば、躊躇なく
『ショージ君の「料理大好き!」』(平凡社1981年、新潮文庫1984年)。
さまざまな料理への挑戦を文章化したものですが、
正確で、知的で、無駄がない。
そして何よりも漫画家が書いたものにふさわしく、映像がくっきりと浮かぶ。
冒頭の「カツオのたたき」での丸ごと一尾のカツオの描写。
プロの料理人の助言を受けながら、それでも失敗もある。
「ちくわ・かまぼこ・はんぺん・さつま揚げ」のように失敗もきちんと書く。
「箸膳(はしぜん)」のあの分厚い「かき揚げ丼」のような高すぎる目標にも果敢に挑む。
(小説家の中島敦は死ぬ間際に「『箸膳』のかき揚げ丼が食べたい」と言ったそうです)
結果は分厚くできず妥協の産物になる。
しかし、かき揚げのプロセスが明確にわかるし、自分でも揚げたくなる。
若い時に祖父に連れて行ってもらって感激した「箸膳」の味がよみがえりました。
知的だけれど重くない文体。
花田清輝、伊丹十三、庄司薫、南伸坊、そして東海林さだお。
この人たちの文体の系譜がなければ、たとえば内田樹の文体も生まれなかったと思います。
明るく楽しくお休みください。
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