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2020年10月21日水曜日

プレゼンス——『相棒』Season19

 (ネタバレあり。注意)

Season19最初のエピソードは前後編の長尺。
『相棒』がお休みの間に続々とテレビにあふれていた刑事物のほとんどは凡庸なものだったなか、完成度の高さで群を抜いていた『MIU404』。
『相棒』はこれにどう対抗できるんだろうかと思っていました。

白バイ警官出雲麗音(いずもれおん)の狙撃犯は誰なのか。
犯人探しのストーリーとしてはそれなりに練ってある。

人間ドラマとしても、実行犯とその恋人の未来が見えない生活の切なさが、
ビルの壁をよじ登って転落した恋人のスパイダーマンの衣装を通じて
押しつけがましくなく描かれていた。

及第点だとは思うのだけれど、
まず、推理ドラマとして腑に落ちない(あるいは説明不足の)点が二つある。

ひとつ目は、ヴァーチャルな世界「ネオ・ジパング」とリアルな世界の人物との関係。
右京と亘が自由に「ネオ・ジパング」に出入りできたのはどうして?
また、「ネオ・ジパング」のようなヴァーチャルな世界で人物たちがリアルな姿のままで動き回っているのは設定として迂闊ではないのか?
このような世界ではアバターとして変身して動き回るんじゃないの?
(まあ、そうしちゃうとヴァーチャル世界での捜査はなりたたなくなってしまうのだろうが)

ふたつ目は。
週刊誌記者風間楓子は「真犯人は女性だ」と実行犯をすっぱ抜く記事を書くのだが、
(そしてそれは当たっているのだが)
風間がどういう根拠で、どういう内容でその記事を書いたのかはいっさい触れられない。
彼女の記事は結末近くで重要な役割を果たしているのに。
右京が推理をリークしたと想像すべきなのだろうが、その点も説明されない。

次にもっと大きなドラマの流れと今回のエピソードの関係について。
これは上に書いた「推理ドラマとしての疵(きず)」とは違って、
わたしの好みの要素が大きい。
だけれども、けっこう多くの人が感じることなんじゃないかと想像するのであえて書くことにします。

このエピソードは以後のストーリーの伏線となる部分が多い。
登場人物がそう。

撃たれた出雲麗音は「謎多き人物」として今後も登場するのだろうが、
えーと、わたしはこの人物が好きになれません。
いやもちろん、フィクションの中の人物としていっているのです。
これから先、出雲麗音を目にしなければならないかと思うと憂鬱になる。

彼女だけではなく、新しく『相棒』の常連になった人間、よくない。

いちばんよくないのは「花の里」を引き継いだ「こてまり」の女将、小出茉莉(森口瑤子)。
別に森口瑤子が嫌いなわけではない。
役柄設定の問題です。

「花の里」の女将を演じた高木沙耶、鈴木杏樹はドラマ外の事情で出演を続けるわけにはいかなったようだが、役柄設定がよかった。
右京もこれまでの相棒たちも、ほかの客がいないにしてもこれ情報漏洩でまずいんじゃないの、という捜査情報を「花の里」で女将に語ってきたのだが、
それは二人の女将たちの人物設定で納得させられるものだった。

でも今度の女将は元芸者の女狐だぜ。
そんな相手に右京と亘はうかつなことはしゃべれないでしょう。
「こてまり」は右京にとって「憩いの場」にはなりえないんじゃないですか。




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