でもイギリスに1年いたことがあるのでイギリスのビールは時々飲みます。
日本人からすると生ぬるいビールをパブで時間をかけて飲むのが好きでした。
ケンブリッジで滞在していたゲストハウスのハウスキーパーは上品な老婦人でした。
滞在客の圧倒的多数を占めるわたしたち日本人に、イギリス文化のすばらしさを決して押しつけがましくなく折伏しようとする愛国者。
その家で二人の日本人と仲良くしていました。
最初の頃にハウスキーパーに「お勧めのパブはないか?」と尋ねると、2,3 軒紹介してくれた。それはそれは雰囲気のあるすてきなパブでした。
なんだけれど、わたしたち仲良し3人組は
「イギリス人ってほんとうにみんなこんな上品に飲んでるんだろうか?」
と疑問に思いはじめ、
ある夜、夜のケンブリッジの街に自転車で繰り出しました。
上品じゃないパブを探すためです。
道路からかなり奥まったところにあるスイスの山小屋風の巨大なパブを発見しました。
奥まったところにあるにもかかわらず、こちらまで騒がしい人声が聞こえてきます。
「ここだ!」
と入ってみると。
ものすごい混みよう。
客層は明らかに労働者階級ばかり。
扉を開けたら床に大男が酔いつぶれて寝てました。
少しひるんだのですが「これは下品でいいぞ!」と思い、酔いつぶれた大男をまたぎ越してとりあえずカウンターに行ってビターを注文。
ジョッキに入れたビターをこちらに手渡してくれる。
なんだけど、
カウンター席で飲んでる人たちの頭にビールがこぼれる。
でも客は頭にビールがかかっても動じることなく話をしている。
わくわくするじゃないか。
ジョッキを手にあたりを見回すけれど席が見当たらない。
とまどっていると、大きな丸テーブルを囲んだ一団の一人が
「こっちへ来い」と手招きしている。
筋肉隆々の体に、今で言えばスギちゃん風にデニムのベストを着てモヒカン刈りの強面の男。
「うわっ、イギリス右翼かも」
と思ったのですが、とても気さくで楽しい人たちでした。
みんなで下品に飲んですてきな時間を過ごしました。
上の写真のパブはそんな下品なパブではなくて、ロンドンはベーカー街にある「シャーロック・ホームズ」。まあまあのパブでしたがお安くなかった。
ビールとともに懐かしいのがイギリスのソーセージ。
最初に食べたときには「うわっ、なんじゃこれ」と思いました。
デンプン質の混ぜ物を加えたモチャモチャした舌触りのソーセージです。
でも何度も食べているとやみつきになる。
朝食で、このインチキくさいソーセージをオーブンで表面をカリカリに焼いたやつが、焼きトマトといっしょに出てくると最高でした。
しばらく前に、イギリス留学経験者たち数人とイギリスビールとソーセージの話で盛り上がって、渋谷のイギリス風パブ「ホブゴブリン」に行きました。
ほんとのイギリスビールを出す店。
料理もちゃんとイギリス風。
シェパーズパイは、ちゃんと羊肉でグレーヴィーソースもイギリスらしいだらしないもの。 つけ合わせのマッシュポテトがもっとズルズルにゆるいといいんだけど。
フィッシュアンドチップスもおいしかった。ちょっと上品すぎるけど、穀物の香りがする酢は「あーー、イギリスだよーー」と懐かしく、ジャブジャブかけて食べました。
客の約半分が、明らかにアメリカ人とは違うルーニー風の顔立ちのイギリス人。
テーブル脇に立って飲んでいる人が多い。
「ああ、そうだったよな」と思い出しました。
わたしたちは当然、ソーセージを注文しました。
他のメニューはイギリスパブそのものだったのですが、ソーセージは違った!!
混ぜ物のないりっぱなドイツ風ソーセージ。
あの安っぽいモチャモチャしたソーセージが食べたかったのに。
仲間の一人は「うーーん、このソーセージはダメだ」と一言もらしたあとで、
「イギリス人の客に『Are you happy with sausages?』(このソーセージで満足なのか?)
と聞いてくる」と言いました。さすがにわたしたちは押しとどめましたが。
もうひとつのイギリスパブのチェーン店「Hub(ハブ)」でもあのモチャモチャソーセージは食べられないようです。
西友でイギリスビールを2本300円弱で売っていました。
写真の「ゴールデン・エール」はその1本です。
なかなかおいしい。これが150円弱だとは!