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2014年1月22日水曜日

右京さんの友達——『相棒』 Season12

(ネタバレあります)

『相棒』はご存じの通り多様性のあるドラマです。
社会問題を扱うときは他の刑事物にはない気骨のある社会批評をする。



でも好みで言うと「物を介した人のつながり」とでも呼ぶべき傾向のものが好きです。
マニアックな『相棒』ファンではないので、タイトルの記憶も定かでないのですが、
『相棒』に惹かれたのは、ふと訪れた箱根(だったっけ?)の洋館で右京が殺人事件に遭遇するというごく初期のものがきっかけでした。

洋館の主である品の良いおしゃれなお婆さまと右京のファッションを介したつながりが見事に描かれていました。

右京は洋館のパーティーでスーツのポケットのフラップ(蓋)をポケットの中に入れています。ポケットのフラップは元来中身を雨から防ぐための物なので、正式には屋内ではポケットの中に入れる。
お婆さまはそれに目をとめて右京の人となりに惹かれます。

お婆さまの亡くなったご主人は、右京のようにオーソドックスにおしゃれをする人だった。最後にお婆さまは右京に向かって
「あなたはとてもおしゃれ。でも主人と同じね。固すぎて遊びがないのよ」
というようなことを言い、
右京のきちんと折られたポケットチーフを抜き取ってクシャッと崩して再びポケットに収めます。

お互いの敬意や愛情がストレートに表現されるのではなく、服やチーフなどの「文化の産物」を媒介にしてシャイに表現される。

社会派ものとともに、この傾向のものが『相棒』の貴重な価値だと思っています。
他の刑事物にはあまりないんじゃないでしょうか。




今日の「右京さんの友達」もその傾向のお話しでした。
真野勝成は『相棒』の脚本ははじめてらしいのですが、きちんとこれまでの『相棒』をふまえて自分の遊びもやっています。凝っているけれど柔らかな脚本。

紅茶や書物を通じて、本質的には性狷介な右京と犯人のあいだに信頼と友情が控えめに形作られていきます。

相棒の甲斐亮は「物の文化」に興味がないわけではないが、右京のマニアックぶりには距離を取っている。しかし、右京と犯人の「物を介した友情」の価値をきちんとわかっていて最後のすばらしいセリフ(「ネタばれはいけないことか?」を書いた私でもさすがにばらしたくない)を言います。



ああ自分はがさつ者だ、と思いました。
右京のように、文化や物を介してシャイに人とつながることをしたいと思っているのに、
ついストレートに思いを表現してしまう。

「慎ましやかな親しさ」の大事さが身にしみる『相棒』でした。





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