(ネタバレあり。注意!)
2/3までストーリーの全体像をつかませず、
なおかつ軽妙なタッチで視聴者をがっちりつかんで放さない。
ひさびさに『相棒』らしい脚本・監督だったと思います。
愛(あい)と幸子(さちこ)の双子姉妹が実は愛の多重人格だった、
というのがストーリーの肝なんだけど、
いろいろお遊びがあって楽しい。
わたしが気づいた一つめのお遊びは。
幸子の着物を、同じ名前の「花の里」の女将、幸子が手に入れたことがことのはじまり。
おいたをしないよう、伊丹巡査部長たちに見張られている冠城亘(かぶらぎわたる)に、
右京は「花の里」の月本幸子を通じて連絡を取る。
月本幸子は冠城亘のガールフレンドを装って電話をかける。
右京からではなく女からの電話であることを確認させるために、
亘は電話を伊丹に渡す。
月本幸子はみごとに「冠城亘の女」を演じる。
月本幸子が他人になりかわっているわけです。
それがもうひとりの「幸子」が愛の演じる多重人格であることの暗示になってます。
それから。
右京が愛の息子とソファに並んでゲームをする場面。
二分割されたゲームの大画面が、「愛と幸子の二重人格」、
さらには息子と「ジュン君」なる友達(これも愛の多重人格の一人)
の視覚的な予兆になっている。
こういうお遊びが脚本の輿水康弘の好きなところです。
そして。
「事件」と呼ぶほどのできごとではなさそうだと思わせたところで、
ちゃんと殺人事件も出てくる。
冠城亘の「老獪さ」よりも「コミカルさ」が出ていた今日の『相棒』でした。
こういうコミカルさの出し方は難しいと想像するんだけれど、きちんと処理してる。
結末のオープンエンドもなかなかのもの。
亘は愛に「余計なお世話だけどあなたは治療を必要としています」と言うのですが、
愛は、問題が起きていないのだからしばらくこのままでいるつもりだ、と答える。
それでいいのかもしれない。
でも。
最後の場面で、「ジュン君」になった愛が息子と楽しく戯れている。
愛は多重人格をうまく処理できているのかもしれない。
でも息子は?
あるいは、子供は想像以上に順応する力があって、
多重人格の母親という途方もない現実を軽々と乗り越えてしまうのだろうか。
その点が結論を出さない「オープンエンド」になっていて、
観ている者に安堵と不安の両方を残す。
奥行きがあります。
ちょっとほめすぎたかな?
でも楽しんだぜ。
0 件のコメント:
コメントを投稿