どうなっちゃったんだ、『相棒』?
今回の「ファンタスマゴリ」、シーズン14の行く末が案じられるボロボロのストーリーだった。
警察も手を出せない闇の大物フィクサー、譜久村聖太郞(ふくむらせいたろう)。
20年前、捜査2課にいた杉下右京もあと一歩まで迫りながら逮捕できなかった。
その因縁の相手に右京が挑む。
その大枠はまあよろしい。
そして闇の大物の家宅捜査にこぎ着けるまでの、
右京と冠城亘(かぶらぎわたる)の老獪な知恵も『相棒』にふさわしい。
しかーーーーし!
肝心の殺人事件の粗雑さは何なんだ???
冒頭は譜久村の愛人、柳本愛が自宅で拉致される場面。
花瓶の青いバラが強調される。
思わせぶりな出だしなんだが。
警察を辞職したあと20年間譜久村を追い続けた、かつての右京の上司、片野坂(かたのさか)。
彼が譜久村に仕掛けた一世一代の罠が、ネットマネー「ファンタスマゴリ」。
これによって譜久村を脱税に誘い込もうとするのだが、
パソコンやネットに詳しくない譜久村のアドバイザーがなんと柳本愛!
おいおい。
だったらなんでわざわざ自宅から拉致させる必要があるんだ?
呼びつけりゃ済む話じゃないか。
しかも。
右京が柳本愛の失踪を調べはじめたのは、
「柳本愛は俺の愛人だ」と言った片野坂の依頼から。
なのに実際は、柳本愛は片野坂の愛人ではない。
連絡を取りあっていた様子もない。
それが後半で明かされる。
ではなぜ片野坂は柳本の消息不明を知ったのか?
そして肝心の柳本愛殺しが、
トリックもへったくれもない粗雑なもの。
逆上した譜久村爺さんが発作的に日本刀で刺し殺す。
庭師に命じて自宅の庭に埋めさせ、
その庭師を殺させる。
闇のフィクサーならもっと悪知恵に満ちた殺しをしてくれーー。
何よりがっかりだったのは、
「文化の産物」にこだわってきた『相棒』なのに、
冒頭から強調される青バラの扱いのいい加減さだ。
青バラはロザリアンの見果てぬ夢だ。
ようやく数年前に「ラプソディー・イン・ブルー」という品種が作出され、
青バラの実現として世界中のロザリアンの話題になった。
その「ラプソディー・イン・ブルー」でさえ、
「青」とは言いがたい「青紫」。
世界のデヴィッド・オースティン級のロザリアンが、
半生をかけてもなかなか作出できない。
それがバラの「青」だ。
一介の金持ち爺さんが趣味で作出できる代物ではない。
譜久村はバラの会社だか協会だかを作っているんだけど、
そんなレベルでできる代物ではない。
譜久村が品種改良した「聖なる愛」はまっ青に近い。
ロザリアンならわが目を疑うくらいの青。
これまでの『相棒』は、
紅茶や時計や人形や、そういう「文化の産物」をきちんと調べ、
ドラマにみごとに活かしてきたと思う。
今回の青バラはあまりに情けないぜ。
もう一度書く。
どうなっちゃったんだ、『相棒』?
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