2014年1月27日月曜日

SEKAI NO OWARI(世界の終わり)

音楽は基本的にFMラジオ(J-Wave)から入ってきます。 
車での往復通勤で3時間弱だから、けっこう聴いていることになる。 

SEKAI NO OWARI(世界の終わり)も、変わったバンド名は記憶に入りましたけど、ボーーっと聞き流していた感じでした。音が好みだな、くらいの印象しかなかった。 

最近流れている「スノーマジックファンタジー」。 
スキーシーズンを当て込んだあざといラブソングだなと思いこんでいたのですが、 
今朝、通勤の渋滞でこの曲がかかったときに、ようやく歌詞が頭に入ってきました。 


スキー場のラブソングじゃなかった(SEKAI NO OWARI ファンの皆様、申し訳ない)! 

「雪の魔法にかけられて僕は君に恋した/もしかして君は雪の精? 」
の部分を聴くと、一応ラブソングに分類されるんじゃないかと思います。 
わたしもこの部分が印象に残っていて、 「スキー場のラブソング」だと勘違いしました。 


でもそうではなかった。 
なんと言うのでしょうか、 
「ものすごく遠いところから『ぼくたち』二人の出会いを見ている」詞です。 
視野が巨大。 

「ぼく」と「きみ」は恋人どおし。 
一般的なラブソングはそういう「二人の世界」をいろんな角度からことばにする。 

しかし「スノーマジックファンタジー」は「二人の世界」を外側から見ています。 
そしてびっくりすることに、この詞の 「二人の世界」の外側には「死」まで含まれています。 
というより、現在の若い二人のしあわせを「死」の視点から眺めている。 
「視野が巨大」と書いたのはそういう意味です。 

彼女のことばも書かれていて、

「貴方と私は終わりがくるの/なのに、なんで出逢ってしまったの?  貴方は『幸せ』と同時に『悲しみ』も運んできたわ/皮肉なものね 」

前の部分を聴くとわかるのですが、彼女が言っている 「悲しみ」は、
「ぼく」の方が彼女より先に死ぬ、という悲しみです。 


そのことばを受けて「ぼく」は自分の死をことばにします。 
(恋をしている現時点で未来の死を想像している、ともとれますし、 
あるいは実際に今死につつある、ともとれます) 

  やがて、僕は眠くなってきた 
  君と一緒にいるという事は、 
  やはりこういう事だったんだろう 
  
「でも良いんだ、君に出逢えて初めて誰かを愛せたんだ /これが僕のハッピーエンド」と続く締めくくりに、とても静かで寂しい風景が広がっている気がします。

「僕」にとって死は「ハッピーエンド」なのだけれど彼女にとっては「悲しみ」だ、という超えられない距離(あるいは裂け目)の風景です。

その風景を嘆くでもなく、「そういうものなんだ」とただポンとわたしたちの目の前に置いて見せている。悲しみがあるとしても、諦念に近い静かな悲しみです。




気になり始めて、前の曲「ねむり姫」を研究室で聴きました。 
(人文学はこういうのも研究のうちなので大いばりでできます。勤務ですから) 

「スノーマジック・ファンタジー」は「ねむり姫」とペアになっている曲だということがわかりました。「ねむり姫」では彼女の方がぼくより先に死ぬ。 (「スターライトパレード」もそういう曲でした)



詞を書いた(ボーカルの)深瀬慧は、 
目の前に起きるできごとをいつも「死」の視点から見ている気がします。 

それなのに不健全さがまったくないのは、 
愛の幸せやすれ違いの、「死」から見たときにはじめて見える光景を歌っているからだと思います。 

「死」を願っているのではなくて、現在を正確に見るためには「死」の視点に立つしかない、という立ち位置。 決意して選びとったのではなく、そういう立ち位置にごく自然に立っている気がします。その自然さが、この人の詞の「静けさ」につながっているんじゃないかと思います。



そういう意味で、この人は若いのだけれど若者じゃない。 
SEKAI NO OWARI というバンド名が腑に落ちました。 


また一人すぐれた詩人に出会えました。 幸せです。

2 件のコメント:

  1. 先生のブログを通して「歌」の聴き方を学べる事を幸せに思います。
    私は今まで歌にメロディーばかりを求めていました。
    「あぁ、この曲のサビはキャッチーでなんかいいな」、といった感じに。
    歌詞なんかそっちのけでした。
    しかし、先生の授業(私が受けた授業ではViva la Vidaと天体観測でした)、ブログを通して
    すこしずつ文学的、哲学的な視点で「詩」を楽しめるようになった気がします。
    私は先生とのオフラインの授業はもう受ける事はできませんが、ブログ(私にとっては授業です)を通して色々な事を吸収させて頂こうと思います。

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  2. >keils skさん
    さっき返信のコメントを書いたのですがなぜか消えてしまいました。もう一度書きます。励ましになるコメントありがとうございます。わたしが歌詞にこだわるのは単純な理由で、ミュージシャンは「本気で表現している」のだから本気で受け取らないと失礼だからです。もちろん受け取り方はさまざまでしょうし、わたしの受け取り方が正しいかどうかもわかりません。しかし、せいいっぱい考えて応答するという礼儀はつくしたいと思っています。

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