2012年10月22日月曜日

この金色の不定型な液体

先週、集中講義に呼ばれて福岡に行ってきた。
4日間で90分授業を15コマというハードスケジュール。

準備していた講義は、ギリシア悲劇を裁判員へのリテラシー教育として読むとどうなるかというもの。聴き手のほとんどは英文科の大学院生で、優秀で熱意がある。で、サービスしたくなって、映画『ロード・オブ・ザ・リング』やコールド・プレイの『Viva la Vida』の文化背景など、予定外の脇道にも力が入ってしまった。

でも今日書きたいのは講義の話じゃありません。

福岡のバーの話から。



ホテルに泊まらず、実家から大学に通いました。
実家はダウンタウンの天神から徒歩15分のところにあります。
昔は庶民的な商店と住宅があるだけの土地。
今はおしゃれなレストランや居酒屋がならぶモダンな地域になっています。
東京で言えば代官山みたいな感じでしょうか。


めったに帰らないので土地勘がなくなっている。
夕食の後で落ちついて飲めるバーを探したのですが、時間もないので見つからない。
これはもちろん昼間。感じよさそうです。
2日目に、地下鉄赤坂駅に行く途中によさそうなバーを見つけました。外のテーブルにアードベッグなどのシングルモルトの空き瓶が並べてある。
でも開いてなかった。



バーの名前はSOLO







3日目の夜、店の前に手書きのメニューを書いた黒板が出してありました。
ガラス張りの店内をのぞくと真っ暗。
「いや、メニューが出してあるのに閉まっているはずがない」と言い聞かせながら、おそるおそるドアノブに手をかけると開きました。

暗がりから「いらっしゃいませ」の声。
あんなに暗いバーは初めてです。

若いバーテンダー1人でやっている。
薄暗がりの中で、アイラ島のシングルモルト・ウィスキー「ブルイック・ラディー」の珍しいのをダブルでいただきました。おいしかった。

感じの良いバー。
でもなんであんなに暗いんだ!?



帰京後、妻の友人から高級なウィスキーを何本かいただきました。
20年ほど前に亡くなったお父様が遺したものです。
木箱から現れたOld St. Andrews


そのうちの一本がオールド・セント・アンドリューズOld St. Andrews 21年物。ですから、少なくとも40年以上前に作られたものです。ごたいそうに木箱に入っています。ラベルはボロボロ。


これは「さざ波」のぐい呑み。
お酒を入れると複雑な色合いに
輝く。
「さざ波」のグラス
吾妻橋のガラス資料館から手に入れた「さざ波」というグラスでそれを飲みました。

こんなにおいしいブレンデッド・ウィスキーは飲んだことがありません。
これから先飲めるかどうかもわかりません。

50年近い歳月が、馥郁たる香りと、何の角もない、でも深ーーい味わいに結晶していました。

いっしょに貰ったニッカの「竹鶴」、これも32年前のものです。
決して悪いウィスキーではありません。しかしこいつの前では水みたいに感じられます。

オールド・セント・アンドリューズの色は、田村隆一の「この金色の不定型な液体」どころではない。
琥珀色です。もっと濃いか。

とても贅沢な寝酒になりました。







洋梨

洋梨の季節です。

洋梨とペッコリーノのサラダを作りました。

なんということはない。グリーンサラダの上に洋梨とペッコリーノ・チーズを薄切りにしてのせるだけです。
しかしそのコンビネーションがなかなかいい。
ローマで何度か食べたことがあって、秋になったら作ろうと思いながら毎年チャンスを逸していました。

ようやく作ってみました。
おいしい。
のだけれど、気持ち洋梨が甘すぎる。
ローマではラ・フランスではなくて、甘み控えめでもっと固い品種を使っていたのでしょう。それともあまり熟していないのを使っていたのか。
日本で適当な洋梨が見つかるかどうかわかりません。今後の課題です。

ペッコリーノは塩気が強いので、グリーンサラダの塩味は控えめに。
それと、以前「サラダ・ドレッシングとサンドイッチのお話」でも書きましたが、酢油ドレッシングの酢を控えめにした方がおいしいです。




もうひとつは「ジョーおじさんのお気に入り」Uncle Joe's Favoritesというイギリス土産の洋梨キャンディー。

ジョーおじさんの顔がなかなか味がある。
中身はきれいな色の洋梨型のキャンディー。
洋梨の自然な香りと味がしっかりあります。

かなり気に入りました。
フィッシャーマンズ・フレンドといい、これといい、イギリスのキャンディーはわたし好みのものが多い。

洋梨二題でした。

2012年10月12日金曜日

明太子のスパゲティ


和風スパゲティの定番。今宵も日本のあちこちで数千人の独身の男たちがこれを作っている気がします(なぜか独身男が作るパスタだというイメージがある)

しかーし!!!
このパスタを作ったあなた、食べたときに胸がつまる感じがしませんか?
「水を飲まないとちょっと苦しいぜ」という感じ。
しなければ別にいいんですけど、あるときわたしは「胸がつまる感じがしない」作り方に気づきました。

いや、なんということはないパスタ作りの基本なんですが。

わたしの明太子スパゲティを紹介します。
参考になれば幸いです。


明太子のスパゲティの作り方(2人分)

《材料》
パスタ (1.6mm)  200g

明太子      2〜3腹
海苔       1/2帖
青ネギ      適量
梅肉       1個分(もしくはレモン少々)

グレープシード・オイルとバター  適量(同量)
塩        適量(食卓塩ではなく、おいしい塩を使う)
日本酒      大さじ1.5(上質の純米酒が望ましい)
醤油       少々


【1 材料を切る】
・青ネギは小口切り。梅肉は包丁で細かく叩く。海苔はハサミで刻んでおく。

・明太子は包丁で縦に切れ目を入れておく。

【2 パスタを茹でる】
・多めの塩を入れた湯でパスタを茹ではじめる。袋に指定された時間より1分短く。



【3 ソースを作る(1)】
フライパンに明太子を指でしごくように入れる(皮を入れないということです)。日本酒と叩いた梅肉(ゆず胡椒小匙半分でもよい)を加え混ぜる。
・グレープシード・オイル、バターを入れて火をつける。このパスタはオリーブオイルを使いません。明太子との相性が良くないので。
パスタを投入するまでやや弱火です。明太子に火が通ったらいったん火を止める。


【4 ソースを作る (2)】
・パスタが茹で上がる1分前にふたたび火を入れ、パスタの茹で汁をお玉で一杯を入れる。これが胸がつまるのを防ぎます。ツルツルと喉に入るパスタになる。フライパンを揺すって油と湯分をなじませる。
・塩ですばやく味つけ。やや強めの味つけでいいと思います。

【5 パスタをソースであえる】
茹で上がったパスタをしっかり湯切りして、ソースに投入。強火にする。
フライパンをあおる。またはトングでパスタをつかんで激しくかき混ぜる
ソースをしっかりパスタに食い込ませるためです。この間にパスタが程よい固さになります。

【6 皿に盛る】
皿に盛ったら、醤油を散らすように振る。あくまで控えめ。味つけは塩です。醤油は香り付けくらいがよい。青ネギと海苔を散らして完成。レモンを使う場合はこの時に数滴絞る。


・わたしはときどき下品に食べたくなって、生卵の黄身+白身少々(白身を全部取ってしまわずに気持ちだけ残す感じ)を皿に入れて潰し、その上にパスタを放り込みます。その場合は醤油をやや多めに。

2012年10月10日水曜日

『相棒』Season11開始

2ヶ月以上更新しておりませんでした。
8月はネットがつながらない環境にこもっていたので。それ以降は多忙と疲労。
『相棒』Season 11 始まったので、短いけど更新しておくことにします。


(ネタばれ注意!!)


脚本イマイチ。
殺人のプロットに致命的な穴が二つある。

新相棒、甲斐享君が刑事になって最初に解決する事件の犯人(実行犯ではないけど)が自分のお母さんだ、というアイロニーにはちょっと感心した。

あからさまには描かれなかったけど、繰り返されるキーワード「偶然」がそれを伝えてました。

でも、「その事実を知ったことで甲斐君が右京さんに別れを告げて相棒解消」という展開になるんだったらあまりに紋切り型でつまらんな。次回以降に期待。