今日の寝酒は「タリスカー10年」。
スカイ島のシングル・モルト・ウィスキーです。
ピートの香りがあるが「ラフロイグ」ほど強烈じゃない。
(ラフロイグについては、投稿「ラフロイグとダッフルコート」2012/2/2を参照して下さい)
「ラフロイグ」がアイラ島の荒々しい大地の味だとすると、「タリスカー」は文化の気高さが感じられる味。「孤高の気高さ」という感じです。
スコッチを飲むと、定番すぎるかもしれませんが田村隆一が思い浮かびます。
「ウィスキーを水で割るように/言葉を意味で割るわけにはいかない」(「言葉のない世界」)が有名ですが、わたしは次の詩の方が好きです。
きみが目覚めるとき
どんな夢を見る?
青いライオンに追いかけられて
地の果てまで?
それとも死んだ男と抱きあって
金色のウイスキーを飲みながら漂流する?
朝 二日酔の電話のベルが鳴る
きみは鉛の腕をのばす
ああ 怖い夢なんか見ていなかったのだ
青いライオンも
金色のウィスキーも。
(『この金色の不定形な液体』新潮社 1979 より)
田村隆一がまだ元気だった頃、民放テレビで田村隆一スコッチ紀行を放送したことがありました。
長身で孤高の老人の風格がある田村隆一が、スコットランドのウィスキーの酒蔵を次々に訪れては、樽からついでもらったスコッチをグイと飲み干し、いかにも詩人らしい含蓄のある評をする。
厚手のチェスターフィールド・コートを来た銀髪の田村隆一はほんとうにかっこよかった。
最後のシーンは、英国本土最西端の海を見下ろす絶壁の上で、スコッチ・ウィスキーのボトルとグラスを手にした田村が海に向かって座り込み、ひたすら飲み続ける。
その姿が、人間の孤独と俗と気高さを体現していました。
それをヘリコプターから俯瞰して番組は終わる。
すばらしい番組でした。
「金色の不定型な液体」のせいで、青いライオンが見えてきました。
わたしの中にいるライオンなのでしょう。
地の果てまでおいかけられないように、もう寝ます。
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